短編・中編
□禁物
1ページ/2ページ
夏風邪。
一度引くと長引く部類の風邪である。
拗らせると、辛いのだが、しっかりとレインは夏風邪を引いていた。
「毎年この時期に風邪を引かれるのは分かっていましたが…今回はまた酷い熱ですね…」
「いい加減…飽きる、な…ゴホッ」
一度口を動かすと同時に咳まで出てくる。
「無茶はなさらないでください。国王様もご心配なされます」
「…父上は?」
国王の話が出てきて様子が気になった。
多少過保護な部分がある父は自分が風邪を引いたと知れば必ず1日に3回以上様子を見に来ようとする。
また仕事を抜け出して来ようとするのかとレインは心配になる。
「大丈夫ですよ。国王様にはまだお話ししておりません。国王様のご公務がまだ残っておられますし、王子も国王様に迷惑をかけたくはないとおっしゃることは分っていますので」
「相変わらず優秀だな、お前は」
「少なくとも、王子のお側にお仕えして十年は経っていますから」
「・・・そうだな」
少し思い出したのか、ゼクスは懐かしそうに笑う。
レインも、ボンヤリとした頭で思い出す。
「・・・思い出すのはまたにしましょうか。早く風邪を治して国王様に元気なお顔をお見せしなければ、感づかれてしましますよ?」
「・・・それは嫌だな・・・」
「でしたら、大人しくお休みくださいね」
「大人しくが無駄に強調されていたような・・・」
「何か?」
「いや・・・なんでもない」
必要以上に突っ込むと、面倒なことになるので大人しくしておく。
「では、また小まめに様子を見に来ますので」
「あぁ。悪かったな」
「いえ、ご気分が優れなくなったらご連絡くださいね」
「あぁ」
わずかに心配そうな顔をしながらも、仕事があるため、ゼクスは部屋を出て行った。
(最近は大丈夫だったんだがな・・・)
最近までの忙しい仕事状況を思い出しながらそう思った。
つい先日まで、祭りのことや国のことについての仕事が一気にきて書類整理がいつも以上に大変だった。
徹夜は当たり前、の状態で免疫力が下がらないわけもなく、今回のように風邪を引く。
それが毎年の出来事だ。
しかし、これ以上風邪を引いたりすればいろんな意味でまずい。
(とにかく早く治さないと・・・)
次にゼクスが来るのはおそらく昼頃だろう。
それまでに一度眠ろうと思い、意識を手放した。