短編・中編
□星に願いを〜CI〜
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7月7日、七夕の夜。
いつもよりも賑やかな城下町を見下ろしながらレインは静かに微笑んでいた。
今日は七夕の夜なので国一帯が七夕祭りを開いているのだ。
本当はスズたちに行かないかと誘われていたのだが、人ごみが得意ではないという事と、つい先日、風邪を拗らせたという理由でゼクスに止められたのだ。
丘の上にある城からは町の様子がよく見える。
楽しそうでよかったと安心していたその時、
「やっほー!レイン居るよね?」
「・・・何故お前がここにいる?」
いつものごとく突然扉を開けて入ってきたのは、珍しく日中にここへ来なかったノイズだった。
「私だけじゃないよ?兄さんも一緒だもん!」
「帰れ」
「酷っ!!」
聞きたくない名前が聞こえて即答する。
ノイズだけならともかく、何故メタルまで来ているのか…。
「今日、七夕祭りやってるんでしょ?ゼクスに聞いたら、レインこの間の風邪でまだ外に出るの禁止にしてるって言ってたから」
「あいつは…」
今は国王の所に書類を持って行っていて居ないゼクスにため息を吐く。
「で、レインはお祭りに行きたいの?」
「別に。人が多い場所は苦手だからな。此処からでも十分町の様子が見えるから大したことはない」
「でも、ちょっとは気になるんでしょ?ずっと窓の外見てたってことは」
「…」
たしかに、少しは気になる。もともと、レインは王族だということで、あまり外には出られない。だから城を抜け出したりするのだ。
父親であるクロード国王も、
『いろいろな経験をしなさい』
と言っているので、あまり怒らない。
今日はさすがに許可されなかったが、普段なら許可が出ていたはずだ。
「だからさ、さすがに町に行こうって言えないから、皆で星見ようよ」
「どこで」
「この城の中庭。そこだったらレインのお父さんもゼクスも許してくれるし」
「…」
まさか、そんなことの為にわざわざ来たのか?とでも言うように、レインは目を見開いている。
「良いじゃん。それに、今年は流星群と日がかぶるってうちのお抱え予言者が言ってたし」
「…わかったよ。行けばいいんだろう?」
「やった!じゃあ早く行こ!皆まってる」
どうしても全員でやりたいのか、頬を膨らませながら言うノイズに、ため息を吐いた。