短編・中編

□Memoria passata. 〜rain ver.〜
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「ははうえ〜!」

穏やかな昼下がり、小さな子供の声がクロード城内に響き渡る。
子供は大好きな母親の元へ駆け寄った。

「あらあら、そんなに急いで・・・。どうしたんです、レイン」
「ははうえ、さくらがパッてなってる〜」

子供、レインは嬉しそうに母親であるカレンに報告する。
カレンはその意味が分かったのかレインの頭を撫でながら、笑う。

「桜が咲いたのね。教えてくれてありがとう、レイン」
「うん!!」

今の季節は春だ。
つい最近、レインの誕生日が過ぎ、レインは4歳になった。
そろそろ咲く頃だろうだとカレンは考えていた。
そこにレインが走ってきたのだ。

「でもレイン、あまり走ってはいけませんよ?またコンコン言ってしまいますからね」
「う〜。じいやにもいわれたです」
「皆心配しているんですよ。お父様に怒られますよ?」

レインは父親のシャインに怒られるのは嫌なのでカレンはそれを出す。
予測通り、レインは「うっ・・・」と言ってから小さな声で呟いた。

「・・・ちちうえにおこられるの、やです」
「なら、気をつけましょうね」
「は〜い」

レインの言葉を聞き、カレンは微笑んだ。
基本、レインは大人の言う事を良く聞く良い子なのでカレンたちは助かっていた。

「ははうえ、さくらみにいこ?」
「そうですね、行きましょうか」
「ちちうえは?」

カレンの服のを少し引っ張ってレインが聞く。
シャインは現在、今日締め切りの書類に追われている。
ここ最近ずっと書類に追われているが、今日でそれは終わりだ。
今はちょうどラストスパートに入っている頃だろう。

「お父様は今、お仕事で大変ですから、また今度、一緒に行きましょうね」
「ちちうえもいっしょ・・・」
「レイン・・・」

レインが寂しそうに言うと、カレンが困ったような顔をする。
その顔を見て、レインは少し俯くが、すぐにカレンを見た。
そして、

「ちちうえもいっしょがいいです・・・。ちちうえがおしごと終わるまでぼくがまんする。ちちうえとははうえとぼくで見たいです」

はっきりとそう言った。
カレンはレインの言葉に少し驚いたような顔をするが、すぐに柔らかく笑い、レインの手を取った。

「じゃあ、お部屋で待っていましょう。お父様のお仕事ももうすぐ終わりますからね」
「!はいっ!!」

レインは元気よく返事をし、カレンに手を引かれながら自分の部屋に戻った。





夜。
シャインの仕事は夕方には終わる予定だったのだが、急な仕事が入って、結局夜まで終わらなかった。

シャインがレインとカレンのいる部屋に向かい、扉を開ける。

「カレン」
「シャイン様。お仕事は大丈夫でしたか?」

部屋に入ると、カレンが社員の方を見て笑いかける。
シャインは少し疲れた様子でカレンに近づいた。
傍にあるソファの上ではレインが眠っていた。

「・・・寝たのか?」
「はい。先程まで起きて本を呼んでいたんですけど・・・途中から寝てしまって」

カレンは苦笑しながらそう話す。
シャインは話を聞きながら、眠っているレインの頭を優しく撫でた。

「明日はお休みですか?」
「あぁ、さすがに疲れたからな。最近はレインにも構ってやれなかったから、明日はこの子に付き合おうと思っているよ」

シャインは楽しみだというような表情でカレンを見た。

「桜が・・・」
「?」
「桜が咲いたと、レインが教えてくれましたよ」
「・・・そうか」

カレンが呟いた言葉に、シャインは静かにそう返した。

「・・・なら、明日は中庭で花見だな」
「はい。レインもきっと喜びます」

カレンとシャインはレインの寝顔を見ながら二人で頷いた。





翌日、レインは両親と3人で花見を楽しんだ。
親子の周りには暖かい空気が流れ、つかの間の休息を穏やかに過ごしたのだった。



*FIN*

・・・・結局思い出なのか、これは・・・。
部屋で懺悔してきます!!(逃)

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