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□OSFM
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「んもぉ!ほんとおじさんなんだから!!」
トレーニングルームからブルーローズの大きな声が聞こえた。


「えぇ!?だってこんなのむずかしいだろ!みんなできねぇよ!」
「アッラー私はすいすいできるわよ。」
「僕もでござる!」
「虎徹は意外と機械音痴だよな。」
「ワイルド君!落ち込むことはない!僕が教えてあげよう!」
「…いや、別に落ち込んではねぇけど…」

朝に一本雑誌の取材があって、それを終えてから
トレーニングしようとやってきたバーナビーは、
部屋のドアの前で動きを止めた。
今日は、ドラゴンキッド以外みんなトレーニングに来ているらしい。
虎徹の周りに集まって楽しそうに談笑している。

彼の周りはいつだって人が集まってくる。
もともと人懐っこい性格にくわえて、おせっかい焼きな彼は
おちゃらけたことを言っているように見えて、きちんと考えており
人の心を思いやるのが上手い。
みんなだってささやかな言葉や仕草や行動に励まされたりしているはずだ。




虎徹が何か変なことを言ったらしい。
みんなの笑い声が一斉に響いた。
虎徹も屈託ない笑顔を見せている。
みんな、おじさんが好きなんだ。
僕だけじゃない。
バディは僕しかいないけど、おじさんの魅力をみんなわかってるんだ。
胸がチリチリする。
ヒーロー仲間に嫉妬するなんて間違ってること、わかってるけど…









バーナビーは、変なことをこれ以上考えないように、
早く汗をかこうとやっとトレーニングルームに入った。

ガチャリとドアノブを開けて入るとみんな一斉にこっちを向いた。
虎徹もバーナビーを捉える。






「バニー!」

見つけた瞬間、誰よりも早く声を発した虎徹は本当に本当にうれしそうにバーナビーを呼んだ。
花がほころぶような微笑みは、さっきみんなの前で見せていた笑顔とは違ったものだ。
ヒーローたちはいきなりの変貌ぶりにぎょっとする。
虎徹を取り巻く空気ががらりと変わったのだ。

そのまなざしは、陽だまりのように暖かく、
でも夏の太陽の様にじりじりと情熱的だ。
少し空気が湿度を帯びて重くなり、じわりと漂うのは甘くにおい立ちそうな色気。
重ねてきた年月のせいか時々セクシーな瞬間が虎徹にはあったが、今のはレベルが違った。
まとうのは、相手への濃度の高い気持ちだ。
体中から、バーナビーのすべてを受け入れ、自分を捧げ、甘えきっている虎徹の
心の片鱗を見せつけられている。





当の本人は、みんながびっくりした顔をしてるなんて全く気が付いていない。
自分が変わった自覚すらないみたいだ。
すたすたとバーナビーに近づいていく。

「取材はおわったのか?」
その声は、いつもの元気のいい声より幾分丸みを帯びている。
「はい、まぁ」

バーナビーは、答えつつ虎徹の後ろから自分たち二人を凝視しているみんなに驚いていた。
心なしかみんな顔が赤い。
なんでそんな口をぽかんとあけて間抜けな顔をしてるんだ?









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