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□もし貴方が
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*学パロ。アルトリア、ディルムッド、ウェイバーが同じクラスで仲良し。
「ったくなんだよ、ディルの奴・・・」
自分とアルトリアしか居ない教室で、ウェイバーは歯噛みをした。
今日からテスト期間。三人で勉強会でもしようかという話になったのに、ディルムッドが女子にお呼びだしを食らった。
まあ、それは日常茶飯事なのだが、テスト間近ということもあり、ウェイバーの機嫌はいつもより大分悪い。
「大体、用件なんて告白だろ?どうせ付き合わないんだから、さっさと帰っちゃえば良いじゃないか」
「ディルムッドは誠実な人だから、そういうことは出来ないのだろう。もうそろそろ戻ってくるはずだし、別に良いではないか」
淡々とウェイバーをたしなめるアルトリア。
そんな彼女を、ウェイバーはむすっとした表情で見つめた。
「・・・アルトリアはそれで良いのかよ」
「何がだ?」
「ディルは確かに女子が苦手だ、だけどいつか誰かと付き合うかもしれないだろ、毎日のように告白されてんだから!」
今のところディルムッドと親しい女子はアルトリアだけ。
ウェイバーより男らしいかもしれない彼女に、ディルムッドは完全に心を許している。
他の連中からはお互いを助け合う親友に見えてるだろうし、それは紛れもない事実だ。
事実では、あるけれど。
「なあアルトリア、もうディルに言っちゃえよ」
「・・・言う、とは?」
「ディルのこと、好きなんだろ。恋愛対象として見てるんだろ」
この鈍い剣道女子は、恋愛対象としてという言葉をつけないと、ウェイバーの言いたいことがわからないのだ。
勿論好きだと言いかけた唇をぎゅっと閉ざし、アルトリアは俯いた。
「好きなんだろ、アルトリア」
「私は、」
「じゃあ、ディルのこと嫌いか?」
「そんなことあるはずないでしょう!」
急に声を荒げたことに自分でも驚いたのか、アルトリアは小さい体をさらに縮めた。
その頬が赤いのは、夕陽のせいだけではないだろう。
そんなベタなことを考えながらウェイバーは彼女を見下ろした。
「ディルムッドは、大切な友人なんだ・・・彼は女性が苦手だから・・・」
「でもお前とは仲良しだろ」
「それは、私のことを女だと思ってないからだ。いや、別に女だと思われなくたって、良い」
呟く声がひどく細くて、儚げだった。
他の連中が見たら腰を抜かすだろうなと思いつつ、ウェイバーはため息をついた。
「・・・まあ今は僕しか居ないんだし、心の中のことを言えば良いよ。溜め込むのも疲れるだろう」
言い終えてウェイバーは静かに待った。
アルトリアが何か言うまで口を開くつもりはない。
ウェイバーの望みは、友人の心を軽くすることなのだから。
「私は」
時計の秒針がやけに響いていた。
アルトリアの声は、普段の凛とした調子ではなく、やけに響く秒針の音にかき消されそうで。
「私は」
とても、苦しそうだった。
「ディルムッドが、好きなんだ」
小さく小さく。
秘密をそっと囁くアルトリアの姿は、あまりにも美しく、あまりにも悲しかった。
「好きで好きで、たまらない。胸が締め付けられるように痛い。
彼が誰かから告白される度に、私は嫉妬してしまう。そんな自分が醜くて、汚くて、許せないのに・・・」
それでも、そう言ってアルトリアは泣きそうな顔で微笑んだ。
「彼が笑うだけで嬉しい。彼に名前を呼ばれるだけで宙に浮き上がる。
彼のことを考えるだけで、幸せなくらい、」
――大好きなんだ。
ウェイバーはもう何も言えなかった。
アルトリアの想いに、何故か胸が焼けそうに切なかった。
でも、これだけは言わなければならない。
「・・・多分、ディルムッドもお前のことそれくらい好きだぞ」
――彼女のことが、大切なんだ。俺の何よりも、大事な人なんだ。
美貌の友人が、優しげに呟いた言葉をウェイバーは覚えている。
「伝えてみたら良いじゃないか。
きっと、ディルは応えてくれるぞ」
そう言葉をかけると、アルトリアは真っ赤な顔で俯いた。
「だって、そんな・・・」
そこから先の言葉は夕陽に熔けて、ウェイバーにも聞こえなかった。
もし貴方がこの想いに応えてくれたら
(きっと嬉しくて、死んでしまう)
槍が出ない剣槍剣。
二人はがっつりラブラブでも、仲良しお友達でも美味しい。
そして、ウェイバーが彼らの突っ込み役兼親友だったら私だけが嬉しい。