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□例え貴方が、
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聖杯に呪いあれと叫んで逝ってしまった貴方は、どこまでもまっすぐで忠実で、不器用な人だった。


数多の騎士たちを見てきた私だけど、貴方はそのどの騎士たちとも違った。



誰よりもまっすぐで、



誰よりも忠実で、



誰よりも不器用な、



美しい、双槍の騎士。












「私は悔やんでいます」



ある日、何故だか一人で出歩いていたとき、何故だか一人で歩いているランサーと会った。



「悔やむ、とは何を?」



会って最初にそんなことを言われて驚かない訳がないはずなのに、ランサーは落ち着いて聞き返してきた。


そこで私は、故郷を救えなかったことを、と言えば良かったのだ。


しかし、私の口から溢れた言葉は、



「貴方と、同じ時代に生まれなかったことを」



だった。


何を言っているのだ、ランサーは敵なのだ、そう思っても私の言葉は止まらない。



「貴方と、同じ時代に生まれていたら」

「私たちは、きっと」

「良い友人に、なれたのに」



悔やんでも仕方ないのに。



「悔やんで、しまうのです」



私の訳のわからない言葉を聞いても、ランサーは驚かない。

ただ私に近寄ってポンと、頭に手を置いた。



「そうだな。俺も、そう思う」



見上げた彼の顔があまりにも眩しくて、なんだか恥ずかしくなった。

私には魅了の呪いは効かないのに。


「そう、ですか」

「ああ、そうだ。俺たちは、良い関係を築けただろう」



彼が私の頭をそっと撫でる。


その優しい動作と彼の骨ばった手から伝わる温もりで、溶けてしまいそうだ。




この瞬間に、世界が終わってしまえば良いと、強く願った私はバカなのだろうか。





















例え貴方が聖杯を憎もうと、私は聖杯を憎まない。何故なら、聖杯が無ければ私たちは出逢えなかったのだから。











捏造しましたすいません。

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