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□此処は愛すべき箱庭
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夢を、見ていた。
「どうして!どうして彼女を助けにいかないのですかっ!」
叫ぶ旦那。
「彼女がいなければ、祖国は、フランスはっ」
旦那の叫びを無視する人々。
そして、炎――旦那の大切なモノを全て焼き尽くす赤い、赤い、炎。
その真っ赤な炎の前でただただ叫び、泣き続ける旦那。
あの時に、旦那が信じてた世界は消えたんだ。
何もかも真っ赤な炎に焼き尽くされ、旦那を禁忌と背徳の道へ追いやった。
「ああ、ああ・・・聖処女よ、ジャンヌよ・・・何故、何故神は私の祈りを聴き届けないっ!」
魂を削って旦那は問う。
そして、その問いかけには誰も答えない。
そんな、夢を見た。
いや、わかってる。
それは夢なんかじゃなくて、現実なのだと。
旦那が生きた現実なのだと。
旦那が崇拝していた神様は死んだ。
あの瞬間に、確かに死んでしまったんだ。
でもね、旦那。
大丈夫だよ、旦那の神様は死んでしまったけど、その時の旦那の心の痛みは何も知らない俺にまで伝わるくらい強かったけど、大丈夫だよ。
「大丈夫、なんだよ旦那」
「どうしたのです、リュウノスケ?」
具合が悪いのですか?
一緒に作品造りに勤しむ旦那が心配そうに尋ねる。
「ヘーキ、ヘーキ」
「それならば良いのですが・・・今朝からなんだかボーッとしていますね、リュウノスケは」
「そうかなあ」
旦那、旦那。
まだ、神様は居るんだよ。
作品を通して伝わるよ。
この世界は、俺みたいな異端さえ受け入れる。
だから旦那のことも受け入れてくれるし、誰のことも受け入れる。
そもそも、こんな世界を望んだのは神様だろう?
この世界がある限り、神様は居るんだよ。
希望と同じくらい、絶望が大好きな神様が。
ああ、旦那に教えなきゃ。
この世界の素晴らしさを、美しさを、愛しさを。
「旦那、この世界は神様の愛に満ちてるんだよ――」
此処は愛すべき箱庭
(さあ、箱庭の造り手を讃える唄を歌おう――)
ただ龍ちゃんが語るだけという残念なクオリティ。