紅き魔王とお姫様

□2幕
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腕を組んでから、気になってたけど…。


「赤司君からいい香りがする」

「…そうか?」

「何か付けたの?香水とか…コロンとか」


あれ?同じだっけ?


「これだと思う」

「…テディベア?」

赤司君はカバンからあるストラップを出して、みせてくれた。
それはテディベアなのだが、テディベアが瓶に入っておりコルクの蓋がはまっている。
コルクの蓋には小さな穴が開いていてここから香りがする。

薄い青色のテディベアだった。


「わぁ…可愛い!どーしたのこれ?」

「…友達のモデルがくれたんだ」

赤司君の友達で、モデルっていったら…黄瀬君か。


成る程…お裾分けってやつね。


「…気に入ったか?」

「うん!赤司君と香りが合ってて落ち着く…」

赤司君はまたカバンをあさりだした。


「…あげるよ」

と、拳をつき出された。

両手を皿にして、赤司君の拳を受け止めた。


赤司君が手を離すと、そこには。


「…!赤色のテディベア?」

「…あぁ、僕はどちらでもいいんだが君は女の子だから赤がいいと思う」

赤司君と色違い……!


……でも。


「…どうした?赤は気に入らないか?」

「ううん…違うの。ただ……」

「なんだ?」

「私は青だから…赤は似合わないな…って」


私は、赤いテディベアを見つめる。


なんだかテディベアの瞳も悲しい目をしてるような気がする。


「…そうだな。」

赤司君は、青いテディベアを私の手のひらに乗せた。


「すまない。青の新品がもうないんだ」

「え…いいの?」

「あぁ」

私は急いで、赤のテディベアを赤司君に渡す。

「赤は俺の色だから君が持っていろ」

「え…?でも…」

「本当は、赤も気に入ってるんだろう?」



……!!



「も…貰っていいの?」

「あぁ、俺の色だから君が持っていろ。そういう理由がないと、君は受け取らないだろう?」


赤司君は、落ちてきたマフラーを首に巻き付けた。


そんなにも仕草も魅とれてしまった。

「…赤司君には、敵わないなぁ」


私は、昔から自分の意見を貫けなかった。

例えば、お父様の会社でパーティーがあって。

お店でドレスを選ぶとき。

キラキラした服はどれも魅力的で、子供の私には到底着れなかったけど…その中でとても気に入ったドレスがあった。

ショーウィンドーに飾られている、淡い色のドレス。

母にこれがいい、と言いたかった。
けど、


『香奈はライトブルーのドレスにしなさい』



本当は、ピンクのドレスがいいなんて言えなかった。


私は、自分の感情を殺し続けてきた。


今だってそうだ。


赤いテディベア。
とても気に入った。

でも、2つも欲しいなんて言えなかった。

私には。


「狡い女の子だよね…私」

「…狡い?」

「赤司君に、2つあげる。って言われるのを待ってたの…欲張りで計算高い」


ふふっと自分に笑う。


「…人間は誰だって欲張りで計算高いさ」

「え?」

赤司君は遠い目をして、話を続けた。
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