紅き魔王とお姫様

□1幕
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暖かい季節から、寒い秋がやってきた。


ふわりとカールがかかった茶色の髪は、朝日を浴びてキラキラと輝いている。


マフラーの隙間から冷たい風が入ってきて、頭を左右にふる。



まるで、お姫様みたい。

昔からそう言われてきた。




お父様譲りのカールがかかったミルクティー色の髪。
外国人の祖父から貰った大きい青い瞳。
スッと通った鼻筋。
淡いピンク色の唇。


私は昔から、本当にお姫様だった。


私の家には執事やメイドがいて、なに不自由なく暮らして。

親にああしなさい、こうしなさいと言われ、はい。と生きてきた。


私がまだ幼い頃、同い年の子は外で友達と元気に駆け回っていた。

私はその頃、家でピアノを弾いていた。


ピアノの先生がとてもとても怖くて、私が上手く演奏出来ないとため息をはくんだ。


先生のため息を聞くと、私はダメな子なんだ。
と思いしらされた。
お母様も、テストの点が悪いとため息をはく。


でも、嬉しかった事があった。

お母様にテストで全部満点を取ったテスト用紙を見せると、

えらいわぁ。よく頑張りました。流石お姫様ね。



と頭を撫でてくれた。


お父様も、沢山プレゼントをくださった。


だから、言えなかった。


お外で遊びたい。
木に登りたいって。

言ったらため息をはかれるから。

あなたはダメな子ね、と。


お母様とお父様のため息をはく姿は見たくないから、私はずっとお姫様を演じていた。


だから、憧れるんだ。


私の好きな、あの人に。




「あ!赤司君おはよ!」


「…あぁ」


「今日は何を食べたの?」


「…いつも通り」


「そっかそっか!」

赤司君は、私が話しかけてるのにすたすたと行っちゃうから息が上がる。



「ね!今日も部活見学していい?」


「…どうせくるな、と言ってもくるんだろう?」


「うん!」


「……勝手にするといい」


赤司君は、さらりと言うと足早に通学路を歩く。


「待ってよぉ!」


私はいつも通り赤司君の腕に絡ませた。


「えへ、捕まえた!」


赤司君は、私たちの組んでいる腕を一瞥しまた歩き出した。


...
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