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□非道い男は好きですか?
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僕の名前は真野 伊織。

セレブ御用達の高級エステサロンで働いている新米マッサージ師なんだ。



ある朝、僕がいつものように出勤すると、なんだか店が騒がしかった。

なにやらみんな輪になって言い争っている。



その輪からちょっと離れていた同僚の梨本くんに声を掛けると、梨本くんは綺麗な顔を歪めながら状況を説明してくれた。


「なにやら今日、大きな声では言えないような危険な会社の跡取り息子が来るらしいんだよね。

怖いから断れないけど、もし機嫌を損ねたりしたら大変なことになる。

それで今、誰がそのマッサージをやるか相談してるとこ。」


まぁほとんど押し付け合いだけどね、と梨本くんは苦笑した。


そうなんだぁ、と2人で話していると輪の中の1人がこちらに気付いた。


「おう、真野!」


みんなが一斉にこっちを向く。


僕はちょっとたじろきながら
「おはようございます」
と挨拶をした。



「なぁ、真野ぉ、お前今日特に予約とか入ってなかったよなぁ?」

店長が寄ってきて肩に腕をまわしてきた。


「は、入ってませんけど…」

恐る恐る店長の顔を伺うと、店長はとても爽やかにニカッと笑った。

「今日の跡取り息子さんはお前に任せるわ!」



「え、えぇっ!!僕ですか!?」


「だいじょぶだいじょぶ。お前最近頑張ってるし客からの評判いいし」

そう言いながらガシガシと頭を撫でる。

「ちょ、店長わかりました。わかりましたから、やめてください」


すまんすまん、と店長が離れる。

「じゃ、そういうことだから!みんな今日も1日頑張ろう!」


みんながそれぞれの場所に散っていく。


はぁと溜め息をついていると、梨本くんがそっと来てどんまい、と肩を叩いてくれた。


僕は力なくありがとう、と言いながら自分も準備に向かった。





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