+ 伊 達 主 従 +


□愛印
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「おい、小十郎…」



鏡の前で衣服を整える政宗から唸るような声があがり、名前を呼ばれた小十郎は振り返る。






「見える所に付けんなって言っただろ」




不服そうにぶっきらぼうに呟いたが、少し照れも混ざったような複雑な声で、政宗は訴えた。



昨夜散々愛し合い、気付かないうちにこの赤い“印”を残した張本人に。












「申し訳ありません。つい…」



政宗の背中に向け、小さく謝る小十郎。

政宗は一つ溜息をつき、振り返った。



近付き、その痕を確かめる。

首筋、鎖骨の上と、一つだけではなく幾つもうっすらと、赤いそれが政宗の白い肌の上に浮かんでいた。


それを見つめたまま、小十郎はいたたまれない気持ちになってしまう。




肌に強く吸い付いた痕。

意外とすぐに消えないもので。

以前、佐助にからかわれて以来政宗は、小十郎には強く注意しておいた。


……はずなのだが。






「我を忘れてしまい、配慮が…」



そこまで言って小十郎は口を閉じた。これ以上、醜い言い訳を政宗に聞かせるわけにはいかないと反省したのだろう。




普段真面目な性格で、政宗から色事の誘いをかけても簡単にのらない小十郎ではあるが。

一度ストッパーが外れてしまうと、普段我慢しているものが一気に解放されるのか、政宗が戸惑うほどに強く、深く、愛される。



それは政宗にとっては、嬉しい事なのだが。


主君に手を出す事に躊躇いを感じながらも政宗を愛する気持ちは抑えきれないという、理性との葛藤で苦しむ小十郎の気持ちは分からないでもない。




だからこそ夜のこの時間だけは、主導権は小十郎に譲っている。

好きにさせている……のだが。





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