+ 蒼 紅 +


□純真無垢
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目の前で動く紅。



愛しすぎて愛しすぎて



ずっとこの腕に閉じ込めておきたい。












「幸村」

「何でござろう?政宗殿」





急な呼びかけにふっと振り返る。



政宗が無言で“こいこい”と手招きしている。



幸村の頭の上に“?”が浮かぶ。




小首を傾げるものの、何も疑う事なく、手招きに導かれるように素直に政宗の元へ歩み寄ってみた。



政宗の口の端が僅かに上がった事に、幸村はもちろん気付かない。





「政宗殿?……!!」




グイッとすごい勢いで腕を引き寄せられた。




「ぶっ」



政宗の懐に、盛大に顔を埋める。




「ぷは…っ、な、何を!」

「捕まえたぜ」

「な…っ!?」





フフッと楽しげに笑う政宗に、幸村はポカンとしてしまう。





「いきなり何を…!政宗殿…っ」




ワケが分からないと困惑気味に声を上げる幸村に、政宗はしーっと唇に人差し指を当てて見せる。


“騒ぐんじゃねぇ”という意味で。


しかしその意味にももちろん気付かない幸村はさらに“??”となる。



そんな幸村の表情を眺めながら、政宗は和んでしょうがない。







「お前って奴は…ほんとに」





ふうっと呆れた溜め息を一つ。





「危機感ってモンがないな」


「き…き、かん?」


「警戒心もゼロだ」


「警戒…でござるか?」





そこまでぼんやり呟いて、幸村はじっと政宗の左目を覗き込んだ。






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