+ 蒼 紅 +
□その笑顔が見たいから
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アイツは、甘いもんが大好きだ。
とくに、団子を頬張ってるときに見せるあの笑顔は、見てるこっちもつられて笑いたくなるほど眩しいもんだ。
その幸村の笑顔を、オレは見るのが好きだった。
「小十郎、ちょっと付き合ってくれ」
「何処へ行かれるのですか、政宗様」
「ちょっと野暮用だ」
好物と知っていても、実はまだ一度も買ってやった事がない。
一緒に食べに行った事すらもない。
理由は、自分があまり甘味が好物ではないから。
しかし思い出してからずっと、いつか買ってやりたいと思っていたが、なかなか暇がなかった。
だが今日は久しぶりにゆっくり出来る日でようやく時間が空き、幸村の好きな団子を買いに行く決意が決まった。
小十郎を誘い、幸村に見付かる前に、茶屋へと向かった。
道中その事を小十郎に話すと、やはり政宗様は真田に甘いですねと言われた。
――そうか?
オレはただ、アイツの喜ぶ顔が見たいだけなんだがな。
と言い返すも、こうしてわざわざ自ら買いに出る程なのだから言う通りかもしれないと、苦笑いを浮かべてしまう政宗だった。
ちょうどいい時間になり買った団子を持ち幸村の元へ向かうと、先に佐助がいた。
「はい、旦那。いつものやつ」
「おお!すまぬ、佐助」
佐助も幸村に団子を差し入れに来たらしい。
とは言え、佐助が団子の差し入れ係になっている事は有名で、もしかしたら鉢合わせするかもしれないと覚悟はしていた。
…アイツがいると厄介だからな。
政宗はチッと軽く舌打ちして、そっと身を隠した。
幸村の上機嫌な声が聞こえてくる。
それに佐助が、ふっと思い付いたように…。
「そういや独眼竜の旦那からは、団子の差し入れとか貰った事ないの?」
「政宗殿からか?いや、まだないが…」
「へえ、好物って知ってるだろうに案外気が利かないねぇ。てっきり貢いでるかと思ってたのに」
「さすがにそんなには食えぬぞ…」
…猿飛の奴。
ちょっとムカッとしたが、堪えた。
「団子は佐助からの差し入れだけで十分でござる!」
「そう言われたら、働きがいがありますよ」
「……政宗殿は」
「ん?」
「政宗殿は、そんな事をするような人ではござらぬ」
「…えっ?それって独眼竜の旦那がケチだって事?い、意外と言うね旦那〜」
「ち、違う!そのような意味では!」
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