兎と帽子屋。
□旅は道連れ。
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季節は初夏。
今年はどうやら猛暑の様です。
貴陽藍家では益々暑いです。
バタバタと倒れる使用人。
私は、その手当てをしていた。
「珠璃氷屋さんに頼んで来て」
「はいっ!あ、母様、稀が熱が下がりません」
「解ったわ、すぐに私の部屋に呼びなさい」
「はい!」
私と珠璃の部屋は装飾品が少なく、窓には簾をかけている為が熱が少なかった。だが、他の部屋は装飾品が熱をもち部屋が蒸し風呂になってしまっていた。
部屋に使用人を寝かせ、部屋では果物の汁を飲ませたり、動脈にあたる部分を冷やし寝かせたりをしていた。
が、流石に氷が足りなくもなり、バタバタと私と一緒に歩き回っていた稀まで熱中症になってしまった。
「すみません…奥様に…」
「大丈夫ですよこれぐらい、そんな顔しないで、ほら風鈴の涼しい音よ」
「あぁ…本当です…」
「ゆっくり身体を休めて」
「はい…」
困ったなぁ、人手が…と思いフラフラと部屋に入ってくる稀の額に手を当てると酷い熱だった。
「稀、寝巻に着替えて横になりなさい。貴女が倒れたら気力だけの使用人達も寝かせられるわ」
「…ですが…私が動いていないと…」
「大丈夫、私は意外と何でも出来るのよ?」
「も、しわけ…あり、ません」
「稀!」
倒れた稀を寝室に運び、服を脱がせ首に氷枕を起き、冷やしたタオルを額に乗せる。
「稀…ゆっくり休みなさい」
部屋を出ると何やら慌ただしく、驚いた。
廊下に出ると、バタバタとする使用人を見て声を張った。
「何事ですか」
「あぁ、奥様…今、龍蓮様が」
「そう…二階堂が倒れました。私が仕切ります。龍蓮より私の部屋に寝ている使用人の手当てに。今日は熱帯夜になるわ、だから、寝巻の予備や、タオルを変えたりと手伝って」
「はい、わかりました」
すぐに玄関に向かうと、馬鹿見たいに羽を頭につけた男が居た。
龍蓮は千代を見るなり目を見開き驚いていた。
千代は頭を抑える。
「何故千代が家にに居るんだ?」
「貴方のお兄様と結婚したんです」
「…………誰と?」
「楸瑛様と結婚したんです。もう、どうせ暇なんでしょう?丁度良いから手伝って。」
「う?は?何だと?何故だ!」
グチグチ言う龍蓮を引きずる。まったく、何が悪いのよ!皆して信じられないって。戰華と結婚したときよりマシじゃない!
「もう、うるさいわね。良い?息子が氷運んで来るから砕いて部屋に入れる。それから、暇なら仰ぎなさいはい、団扇」
背中にさしていた団扇を龍蓮に渡す。くるくると無表情に柄の部分を回して遊ぶ。
「……千代、こんなちんけな団扇で抑…」
「黙りなさい。働きなさい。弟が姉に従わないなら放り出す。真っ裸で…ね」
「…脅迫だ」
「火急ですから。仕方ないですね」
振り返り凄むとムスッとする。
ため息をつく。
「わかった。良いわ。貴方に頼った私が馬鹿だった」
団扇を奪い立ち去ろうとすると手首を捕まれ、振り返る。
「千代!そうじゃない!何故、楸兄上と結婚したんだ」
「稟を、自由にする為よ」
黙る龍蓮を置いて、部屋に戻る。
龍蓮は千代が好きだった。
嫉妬だった。