夕凪に佇む。
□不偏←彼女→不変。
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「神村さんまだ?早くしてよ」
「ねぇ、まだ?」
「うぇ。誰だよ神村なんかに書類頼んだのきったねぇ」
「神村、討伐だ」
「副隊長!まだ神村は書類があるんスよ」
「同時にやりゃぁいいだろ」
───────────疲れた
雑音がする。うるさいうざったい腹立つ。いや、もうそんな感情も疲れた。どうでもいい、雑音なんだから。雑音だ。
雑音が。雑音は雑音しかない雑音だ。
「神村」
「神村さん」
「神村」
「オイ、神村」
「神村」
呼ぶな呼ぶな呼ぶな。
嫌だ、苛立つ。
いや雑音だ、雑音。
腹立つ。疲れた。
────────────限界
限界。
あぁ私の限界はここなのかな?
限界。
「千代」
私には一つやりたい事があるのに…まだ、叶えてない夢があるのに、限界なんてまだ。こんな近くにあっちゃいけない。
「千代」
雑音に紛れて何かが聞こえる。
「千代」
鼻が貴方を、目が貴方を探している。
────────────恋音
貴方が優しく微笑んでいる。
私に、優しく。
伸びすぎた前髪を分けて、顔についている泥を拭ってくれた。
「千代、歯ぁ食いしばれ」
「!?」
額から頭の後ろまで響く。
痛いです。
「い、痛いっ痛いよ!」
「痛いよ!じゃねぇだろ、テメェよくも遥旬を選んだな」
「っ…違う」
「結果遥旬の為だろ」
「だ、だって!父上は─…」
「あぁ、俺はお前が考えてる通りずっとお前を待ってた、ずっとな、ずーっと」
一角が目の前で喋ってる。
「なぁ、俺が今ここに居る理由解るだろ、お前なら。」
もう、良いの?
「千代、こんなに窶れて、馬鹿だなお前は」
唇が重なる。
ずっとずっと我慢していた涙が流れた。
「もう、終わるの?」
「終わらせる」
「っ…一角……」
「あの場所に居る、待ってる」
私の総ては細胞じゃなくて一角の総てから出来てるの。貴方が私を強くさせる。
貴方が私の背中を抱きしめてくれるから寂しくない。
「先に行ってる」
「うんっ」
静まる雑音。
もう足枷は無い。
立夏も、きっと今頃私と同じく泣いている。
夕凪を日番谷隊長が連れてきたのを感じたから。
きっと凪は怒って立夏を受け止めるだろう。
人並みじゃない"普通"を愛してくれる貴方方へ。
私はまだ、限界も疲れも見えない。