memorial

□tada’s gift story 2
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開けっ放しの窓に肌寒さを覚え、少年はむくりと体を起こすと静かにそれを閉めた。早朝の虫の音と薄明るい日の光がほんの少し遮断され、己の居る空間がより濃密になる。

「…ぉはよー」

閉めた窓から覗く外の様子に視線を注いでいれば、すぐ傍でそんな言葉が聞こえた。少年は小さく覚悟を決めると、声の方向に顔を向ける。

己の隣で、生まれたままの姿で横たわる存在は、未だほんの少し眠たそうだ。その様子に少しだけ肩の力が抜ける。言葉よりも先に出た無意識の左手が、傍にある存在の柔らかな黒髪をゆっくりと撫でた。

「…おはよ。喉…渇いてない?」

ぱちり、ぱちりと瞬きをして少年に視線をよこすその存在は、かけられた言葉をそれなりの時間をかけて飲み込むと、瞬く間に頬を赤く染めた。 面白い―と自然顔を緩ませながら、少年は髪を撫で続けたまま様子を窺う。 頬を、と言うより耳や首までも真っ赤に染めたその存 在は、逸らされる事なく自分に向けられた柔らかな眼差しに瞳を揺らすと、ゆっくりと首を縦に振った。

「…体、大丈夫?」

「……おぅ…」

目の前の存在の喉が少し嗄れている。 恐らく昨夜の行為の影響だろう。少年はそう考えながら、髪を撫でていた手をするりと喉元へと移動させた。

「……声、掠れちゃってるね」

こくんと小さく頷く様子に微笑みながら、少年は手を徐々に下ろしてく。 喉、鎖骨―しなやかに引き締められた胸板、その下の心の臓。ドクリドクリと平常より早めに打たれているその上に掌を広げて、そっと押し当てる。

「…もっと…優しくできれば良かったんだけど…」

ドクンッと小さく跳ね上がったように感じた。少年は少しだけ力なく微笑むと、目の前の存在に額を寄せた。

「…ごめん。やっと…全てが手に入ると思ったら、余裕が無くなって」

情けない告白に、寄せた額越し首を振る動きが伝わ る。

「…ォレも、」

「ん?」

「俺も、…やっとお前を手にすることができたような気がする」

目を合わせれば、へにゃりと、どこか力なく微笑む存 在が飛び込んでくる。 心の臓から頬へと掌を移動させ、少し赤くなっている目元を優しく撫でた。

「…もっと見せてみろよ?お前の慌てたトコとか、全然余裕無いトコとか、俺はまだまだ知らねーし」

「……後悔するかもよ」

目の前の存在はごそごそと手を持ち上げると、少し冷えた指先を少年の頬に伸ばした。

「後悔なんてしねーから。兄ちゃんは雪男のこともっと知りてーんだよ」

そう言って微笑むその姿は、15の存在とは思えないほど綺麗に、綺麗に微笑む。 あぁ、兄さんには本当に敵わないな―そう思いなが ら、少年も負けじと綺麗に笑った。



END.

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