memorial

□夜桜の下、君と僕なら。
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「何で僕が」


塾の入口扉をバタンと閉められて放心状態の僕。有無を言わさずに塾を追い出された。
実際仕方無いと思う、だけど、あんまりだ。
明日の朝までなんて。






******





事の始まりは一時間前。
塾の授業を終えた後、職員会議と称してフェレス卿から呼び出された講師一同は職員室に集められていた。
最後に揃った講師が席につくと見ていたかのように職員室の扉は開いてかつかつと靴音を立てながらいつもの不適な笑みを浮かべたフェレス卿が並べられた机の中央に立った。


「ハァイ、講師の皆さん!お疲れ様です☆」


全員の視線が注がれる中、また何か厄介な事を提案されるのではないかという思いを抱いているのは僕だけじゃないだろう。そんな僕の様子に気付いたのかこちらとちらりと見た黄緑色の瞳が細められた。


「集まっていただいたのは毎年恒例になったアレを急ではありますが明日開催致します!明日塾はお休みですし、任務は簡単なものばかりに抑えてありますので皆さんふるってご参加ください☆場所はいつものところ、時間は明日お昼頃から、食料は私が用意致します。楽しい会に致しましょう」


講師として一年目の僕には何の事かわからない。イベントであることに間違いはなさそうだが、参加は強制じゃないみたいだし何よりこういったこと、僕は苦手...


「奥村先生」

「は、い?」

「今年は貴方が担当です☆」


何の事だとただフェレス卿を見つめる僕の肩にぽんと手が乗せられる。振り返ると湯ノ川先生が申し訳なさそうな顔で小さな溜め息を吐いた。


「仕方無いんだよ、ここの恒例でね」

「は?」

「一番若い奴の仕事なの」

「だから何ですか?」

「場所取りですよ☆」


いつの間にか正面にいたフェレス卿は僕の目の前で持っていたピンク色の傘をくるくると回し、お馴染みの言葉を呟いた。


「アインス ツヴァイ ドライ☆」


ピンク色の煙と共に飛び出したのはブルーシートならぬピンクの水玉シート。


「奥村先生の今日の任務は霧隠先生、事務仕事は椿先生と僕で割り振るから。奥村先生は心置無く場所取りに専念してきて」


湯ノ川先生からばふっとシートを渡されて場所のメモ書きを渡されると背中を押されて職員室から追い出されるように先を急かされた。
僕に反論の余地は与えられずにこの状況を飲み込むしか無さそうだ。大きな溜め息を一つ吐いて持っていたピンクの水玉シートを抱え直した。






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