memorial

□鈍感なマイラバー
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「雪男って勉強とか祓魔師としての能力は高いのに、人の気持ちにちょっと鈍感なところあるよな」

俺の師匠の赤髪の女性は頭の後ろで手を組んでそう言った。
俺自身あまりそんなこと思ったことはなかった、というかそんなこと考えたことも無かった。逆にあいつはいつも俺の気持ちを掻き乱すくらいで...。「鈍感」なんて言葉は雪男からは遠いところにある言葉だと思っていた。
それをシュラに話してみたら「そりゃ当たり前だ」と言われて俺の頭は悩むばかり。


「おまえから積極的に何かするってこと無いだろ?」

「うーん...無い、かも」

「だろ?いっつも雪男からのアクション待ちだから気付かないんだよ」

「そうなのか?」

「おまえから何かアピールすれば、鈍感な雪男が見れるのかもな」


確かにそうかもしれない。
俺からアピールすれば今まで見たことのない雪男を見れるかもしれないという好奇心。
これから抱くどうしようもない気持ちが始まったきっかけはここにあったのだ。





******






「ブロッコリーにするか...セロリにするか...」


学園町内にある近所のスーパーでそれぞれを手に持ち頭を悩ませる。
塾の授業の後、急な任務が入ったから帰りが遅くなると言い残して雪男は敵地へ向かった。夕飯は食べるから置いておいてと言われて寮に戻る前に買い物に来たと言うわけだ。


「やっぱブロッコリー」


ふんふんと鼻唄を歌いながら手にしたそれをかごの中にポンッと入れて通りすがりにトマトも手に取った。そのまま鮮魚コーナーへと足を向ける。


「んー...」


今日は刺身がお買い得。結構沢山入っていて鮮度もいいし値段もまぁまぁだ。少し向こうにある精肉コーナーに目を向けるとそちらはそちらでちょっと賑わってきた。店内放送が入ってタイムセールスの案内が流れると更に人で賑わい始めた。


「一応聞いとくか...」


ポケットから携帯を取り出して手早く簡潔なメールを打つ。絵文字もない本当に簡素な内容だ。


──刺身とハンバーグ、どっちがいい?


送信ボタンを押して視線を戻すと既にタイムセールス商品は瞬く間におばちゃんの手に渡り残りわずか。わざわざ雪男にメールした意味も無くなってしまうがそんなこと言ってる場合でもなくて、手元にあった刺身一パックを自分の陣地のかごに入れて、精肉コーナーの敵地へと俺も向かった。






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