memorial

□名誉の負傷
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薄暗い森の中。
ここはある資産家の所有する街外れの森林区域。
とあるきっかけで悪魔が住み着き、障気を撒き散らしては木々やそこに住む動物の命を奪っているという。
問題の悪魔は一体。
祓魔は特別難しい訳ではないが動きが俊敏だと事前報告を受けていた。


「行きましょう」

「はい」


パーティを組むのはまだ祓魔師になって間もないという詠唱騎士。
経験の浅い彼は極度の緊張状態のようだった。


「大丈夫ですよ、貴方は有能だとフェレス卿から聞いています」

「そんな、僕は貴方の足を引っ張ってしまう気がして」

「相手は大した悪魔じゃない。自信を持って下さい」


何とか落ち着いてもらおうと笑顔で話し掛けながら森の奥へと進んで行く。
木々の間を抜けていくと今までの空気の流れとは変わり、まとわりつくような陰湿な空気へと変わっていく。

茂みの先に赤く光るものが二つ。


『何をしにきた』


赤い光が上下に揺れて近付く。


「僕が気を逸らしている内に詠唱を」


小さくそう伝えると直ぐに前へと飛び出した。
悪魔の姿も月明かりに照らされてあらわになっていく。


「何って、そんなの決まってるだろう?」

『あぁ、おまえ、知っているぞ』


大きな身体がゆらりと揺れて不気味な笑みが向けられる。


『天才祓魔師とか呼ばれてんだろ。まだガキの癖に生意気だとか』

「悪魔でも井戸端会議するんだな」

『っくく...本当に生意気だ...』


その大きな身体に終われていた黒々とした翼が開かれ、その大きさは元の大きさの倍以上に感じる。どんな攻撃を仕掛けてくるのかと構えた瞬間に飛ばされそうになるくらいの風圧に腕で顔を覆った。

風の音に混じるギシリという僅かな地を踏む音に身体を強張らせ足元に目をやると黒い影がすぐ間近にあった。


『こんなんで俺に勝てるのか?』


耳に入る言葉がざわりと背中を駆け抜ける。
一瞬で突き飛ばされて大木に身体を打ち付けられた。


『何だ、もうおしまいか?』


にやける悪魔はゆっくりと僕の傍へ歩み寄る。


──もう少し傍に寄れ。あと少し。




ドンッ、ドンッ




二発の銃声が夜闇にこだまする。
精銀の銃弾が右肩と左膝に命中した。

それを確認した仲間の詠唱がよく通る声で響き渡る。
次第に悪魔は頭を抱えてのたうち回り出した。


『くそっ!もう一匹隠れてやがったか!』


詠唱騎士を睨み付ける悪魔の目が赤く燃え上がる。


『おまえも苦しむがいい!』


すぅと息を吸い込み勢いよく吐き出された障気は詠唱を唱える祓魔師目掛けすごい早さで流れていく。
それでも彼はしっかりした声で詠唱し続ける。


僕は彼に向かい走った。

悪魔は詠唱により空に飛散した。





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