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□THINK
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離れ離れに過ごしてきた時間は貴方から生きる力を少しずつ奪っていた。僕は天から貴方の姿を見ていたけれど、貴方は全くの孤独だったから。まるで生気を取られたように貴方の中身は空っぽになりつつあった。

でも今の貴方の青には僕がいて、それはゆらゆら揺らめく凪いだ海の色のようで静かに静かに細められた。

映っていた僕は雫となって触れる手の甲を湿らせる。その暖かさに僕は貴方の傍に居られる事を喜び、濡れるその頬にそっと口付けを落とす。


「遅ぇんだよ」


今見ている姿とはそぐわない不貞腐れた言いぐさも、きつく絡み付いて離れない黒い尾が貴方の内面を顕著に表しているから僕はわざと問うてみる。


「寂しかった?」


首元に埋められた青み掛かった柔らかい髪が答えるように少しだけ揺れる。その身体を抱き締めて懐かしく優しい香りを胸一杯に吸い込んだ。
充たされる僕の中のタンクは甘い蜂蜜で溢れるようで掬えばその充満する香りに侵食されまとわりついて離れられなくなる。理性など抑えられるはずもない。

古いスプリングがぎしりと軋む。
一緒に沈んだ白いシーツの皺が僕らの動きに合わせて表情を変えた。


「くすぐったい」


視線を外さない大好きな青からはまだ雫が溢れていて手で拭いきれぬそれに舌を這わすと貴方は無邪気に笑った。


「抱いてもいい?」


愛しいその笑顔に僕も笑ってそう願えば一際赤くなった頬がふわりと近付き柔らかな口付けが僕の黒子を優しく捉える。
貴方は同意の言葉も拒否の態度もあらわにしないが、恥ずかしがりの性格の中に愛情を感じたのは言うまでもない。

そのキスが答えだといいように解釈して貴方の肌に手を這わせ、僕の唇は貴方を貪る。そうすれば必ず暖かい掌は僕の頬を撫でるのだ。僕はそれが合意の証だと首元に顔を埋めてきつく皮膚を吸い上げた。繰り返していく度に上がる体温と悩ましげな吐息、そして欲に濡れた声が何度も自分の名を呼ぶと耳は侵され脳内も犯されていく。
優しくするつもりだった。しかし歯止めが効かなかったのは貴方も僕も同じだった。

荒々しくボタンを引き裂き、噛み付き、そこから流れる血を舐めて少し苦痛に歪む顔を見ながらも勃ち上がり始めた欲望に手を伸ばし、徐々に速めて良いように促した。羞恥に赤らめた顔を見るともっと自分の手で高みに持っていきたくて、もっと夢中にさせたくて自分の中に沸き上がる欲求に淫魔や色魔になったような気分になる。
性急な行為に貴方は自分の快楽で手一杯なはずなのにそれでも僕の欲望に手を伸ばしゆるゆると刺激する。二人が動く度に溢れる水音が麻薬のように更に羞恥と興奮を煽った。
ぎちぎちと張り詰めるお互いの自身はもう限界で、向い合わせで首に手を回す貴方の瞳の中心は欲の火を燃やしていた。
乱暴に自分の欲望を押し付ける。久々なのに優しさもなく獣のように交わり快楽に身悶えて、自分を欲する貴方を目に焼き付けてほくそ笑み、幾度も幾度も過剰な愛情を注ぎ続ける。それでもまだ、まだ。

ここが何処だかなんて配慮も出来ないほどに100年の隔たりと悪魔となった僕の血は穏やかに事を進めることなど出来なくする。
僕らはただ相手を欲し貪欲に相手を貪った。






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