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□Sakura
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学校と塾が休みに入り、それと同時に数日分の荷物をまとめて雪男は遠征に向かった。
仕事じゃ仕方ないなと俺は考えていたことを諦めたけど、浮かれて計画立てていた走り書きを見せたのが良くなかったのか雪男は俺に付き合えないことをすごく気にした様子だった。約束なんかしていなかったんだから気にすることなんてないのに。

することもなくて、天気のいい日中だというのにベッドに横たわり腹の上で眠るクロの暖かみに俺までもが再びまどろみの中に落ちようとしていた。これもまた幸せかな、なんて思っていた時耳元に置いてあった携帯が大きすぎる着信音撒き散らす。


「...ふぁい」

「あっ、奥村くん?なんや、寝てたんか?先生おらんからって緩すぎるんとちゃう?」


電話の主は緩い京都弁で俺の行動を見ているかのように戒める。雪男以外から小言を言われるとは...しかも志摩からって。


「おい、暇なら運動がてら出てこんか?どうせ暇持て余しとるんやろ」


次に聞こえてきたのは不機嫌なような低い声。実際不機嫌なんじゃなくて照れ隠しみたいなのがあるんだろうけど。


「クロの為に猫用おもちゃやおやつもありますから!待ってますよ」


子猫丸、お前が会いたいのは俺じゃなくてクロなんだな。


「ほな学校近くの桜ぎょうさん咲いとる公園でな!」


おい、俺の気持ちは反映されねぇのかよ。三人とも言いたいことだけ言って通話終了しやがった。俺電話出たときの返事しかしてねえし。


「りん、どうかしたのか?」


腹の上で丸まって寝ていたはずのクロは今は俺の携帯を持つ手に顔を擦り付けている。「起こしちまったか、ごめん」と謝ると「謝ることなんかないぞ」って今度は頬に顔を擦り付けてくる。そんな行動に心も穏やかになってクロの頭をそっと撫でてやった。


「クロ、花見行くか?」

「花見って桜か?」

「おぅ、志摩と勝呂と子猫丸が誘ってくれたんだ。おまえのための遊び道具やらおやつがあるってさ」

「わーい!いくいく!」


キラキラと輝く大きな瞳がこちらまで笑顔にさせる。勢いをつけて体を起こし、ちらりと誰もいない向こう側のベッドに視線をやった。
雪男もいたらよかったのにな。


時刻は午後1時半。
今からいったらちょうど小腹の空く時間になるかな。何か使える食材あったっけ...。
俺はベッドから降りて、トテトテと後を付いてくるクロと共に部屋の扉を開けた。






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