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□チョコと赤いプレゼント
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自分の机に向かった雪男はそれから一言も発しない。ちょっとダメージが大きかったようだ。てか俺が10個もチョコ貰ってたらショックって複雑なんだけど...。
ちなみに内訳はしえみ、出雲、朴、一応シュラからも貰って塾関係で4つ。あとは同じクラスの女子から3つ、別クラスの同学年の女子から1つ、購買のおばちゃんから1つ、なぜかメフィストから1つ。
最後のは義理じゃなけりゃ気味悪いけど、いずれも普段世話になってるから感謝の気持ちを込めてどうぞって感じだった。


「あのさー」

「何?」


視線さえ寄越さない雪男がちょっとムカついた。何でもないってふりしてイライラしてるのは隠しきれてない。15年も一緒にいるんだ、わからないわけ無いだろう。


「わかったか、俺の気持ち」

「は?」

「俺はいっつもそういう思いしてんだよ」


つかつかと歩み寄って足元の紙袋一杯に入った色とりどりのリボンや包装紙を纏ったチョコの数々を指差した。その数は俺の手元にある10個なんて霞んでしまうほど。


「それ全部本命だろ。チョコに限んねぇぞ、ラブレターだって弁当だっておまえに向けられる誰かの好きだって気持ちがわかっちまったらすげーもやもやすんだよ。俺ばっかそんなの嫌だったからわかってもらいたかった」


ぽかんと口を開ける雪男にふんと鼻を鳴らしてそっぽを向くと少ししてからハァと吐く溜め息が俺の手にふわりと掛かる。目だけを横に動かして見ると頭をぽりぽりと掻く姿が見えた。


「...そっか」

「おぅ...」


何となく二人して目が合わせれなくてちょっとの沈黙が重くのし掛かる。
わかってくれたのなら次のステップだ、バレンタインはまだ終わっちゃいない。


「で、これ、やる」


後ろに隠していた綺麗な赤色の箱。上手くリボンが掛けられなかったからちょっと可愛い造花とくるくるしたリボンの付いたシールを貼ったんだけど。
雪男の目の前にずいっと両手で差し出して、端から見れば「付き合ってください」と告白してるみたいじゃないかと頭の片隅でちょっと思っただけで思いっきり恥ずかしくなる。早く受け取ればいいものを雪男は固まったままだった。






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