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□チョコと赤いプレゼント
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「い、いらねぇの?......つーか困るか!甘いもんあんま好きじゃねぇのにこんなにいっぱいあるんだもんな」

「違うよ、嬉しくて...」


俺の手に雪男の手が触れて、手に心臓があるみたいに触れたところがどくどくと熱くなる。じっと見つめてくる瞳まで熱が籠ってきているように思えて目を逸らした。必要以上に心臓がばくばくして、まだ言いたいことがあったはずなのに「あー」とか「うー」とか言葉にならない音しか出てこない。いつまでたってもそんな感じの俺にクスッと笑って、受け取った箱の蓋に手を置き換えた雪男は問うてくる。


「開けてもいい?」


うん、と頷いて蓋が開く様子をドキドキしながら見守った。ゆっくり開けられて頑張って作った何粒かが顔を覗かせると俺は瞬時に雪男の表情を伺った。ちょっとだけ開いた唇から空気が吸い込まれて吐き出される。さほど変わらない雰囲気にあんまり好みじゃなかったのかと勘繰って眉根を寄せると、その中のひとつに手が伸びてゆっくり開く唇の奥に消えていく。緩く繰り返される咀嚼の後に口端がゆっくり上がった。


「ビターだね」

「その方が好きなんだろ?」

「うん。兄さんはミルクチョコの方が好きだよね」

「何だよ、大人ぶりやがって」


ちょっと馬鹿にされたように思えたけど「おいしいよ」とか「ありがとう」と言う笑顔を見たらそんなことはどうでもよくなってしまう。また一粒、俺の作ったチョコレートは甘いものが得意じゃない雪男の口の中へ消えた。


「あぁ、そうだ」


小さく呟けばこちらを見た雪男は首を傾げた。ある人物から聞いた事を元に、考えていたことがあったのだ。

でも、やるべきか、...やめておくべきか。

背を向けて自分の机の前まで進むと上段の引出しに手を伸ばした。






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