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□始まりの日3
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待つこと30分。
その間に塾の先生方はそれぞれの予定に散り散りに出掛けていき職員室には私一人。


「...何かあったのかな?」


軋む椅子から腰をあげて扉へ向かう。


「ん?」


鳴き声が聞こえた。猫?
遠くでないどこか、しかしこの部屋ではないことは確かだ。
扉を開けて廊下を見渡すが誰もいない。でもまだ鳴き声は止んでいなかった。


「......ちょっとだけ見てこようかな、
怪我とかしてたら可哀想だし...」


自分に言い訳をしながらくるりと振り向くとさっきまで座っていた椅子にもう一度座って奥村先生の机の上にあったペンとメモ用紙を拝借した。
あまりキレイとは言えない字で内容を纏めると先生の机の上にそれを置き、少し急ぎ足で職員室を出た。






******






「すみません!遅くなってしまっ......」


誰もいない職員室。
待っているはずの人が、いない。
慌てて走ってきた廊下にまた目をやるが人がいる気配はなかった。


「待っていられなくて帰ったのかな......」


ボソボソと呟きながら歩いて机に向かうとそこには一枚のメモが残されていた。


─猫の鳴き声が気になるのでちょっと見てきます。すぐ戻ります。


「...猫?」


猫など入り込むことはまずない。ここの管理は徹底されているから主人が明らかなもの、または犬になった理事長なら話は別だがそれ以外のものとなると...。

もう日も落ちかけて外は暗くなり始めている。少しだけ焦る気持ちを落ち着けて僕は彼女を探しに行くことにした。

でも探すと言ってもここは広い。生徒の数にそぐわない広さだ。ふうっ、と小さくため息を漏らして奥の教室に足先を向けるとずっと先にある教室の扉が僅かに開いているのが見えた。


「あそこか...?」


かつかつと歩くたびに響く靴音。
しばらく歩いていくと扉のわき、だいぶ下の方からひょっこりと探す人物の顔が覗いた。


「あっ、奥村先生っ!」

「いたんですか、猫?」


さらに近づくと彼女の腕の中には真っ黒な猫が抱かれていた。その猫は僕を見るなり目を見開き牙を剥いて激しく威嚇した。彼女の制服にその爪が食い込んでいる。


「こら、どうしたの?さっきまでおとなしかったのに...奥村先生は優しいから大丈夫」


彼女がゆっくり優しく頭を撫でてやると次第に唸り声は止み立てられていた爪もおとなしくしまわれた。ただ睨み付けるような視線は変わらなかった。






*

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