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□抑えきれない身体
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「…ただいま」


それはやたらと小さな声で扉に視線を移すとすぶ濡れな状態でドアの前に立っていた。


「おかえ……雨、降ってたか?」


寝転んでいた身体を起こしてタオルを渡そうとタンスに向かって立ち上がると雪男らしくないか細い声が俺に告げた。


「…悪いけど一人にして」


低く呟く声は俺を遠ざけようと刺すように冷たかった。


「雪…男?」


俯いたままの顔は表情がよくわからなくて近くに寄ろうと背後から近づくと今度は威嚇するように声を荒げた。


「来るな!早く出てってくれ!」

「どうしたんだよ、俺何か気に障ること…」

「そうじゃない、いいから早く一人にして!」


いつも冷静な雪男がこんなに声を荒げて挙動不審でまともな受け答えも出来ずにただ俺を遠ざけようとする。
普通じゃない。
濡れた肩は僅かに震えて顔は赤く見えた。


「おまえっ、熱があるんじゃ…」


慌てて肩を掴んで無理矢理正面を向かせると雪男は余計に震えだして自分で自分の身体をぎゅうぎゅう抱き締めた。

上げられた瞳は酷く潤んでいてこんな状況で有り得ない眼差しだと不謹慎にも考えてしまった。


「兄さん、…今は説明してる…余裕が無い…から…早く部屋…から出て…」

「こんな姿見せられてほっとけねぇだろ」

「早…く…」


俺は雪男を置いて部屋を出る気なんて無かった。
取り敢えず濡れた服を着替えさせなくてはと腕に手を掛けると一瞬でその手を取られてよろけたまま床に背中を叩きつけた。


「ってえなっ!!何すんだっ!!」

「…だから…言ったの…に」


抵抗する間もなく唇が荒々しく貪られて雪男の舌が無理に唇を押し広げてくる。いきなり下肢を探られて快感よりも恐怖感が襲ってきた。
雪男の顔を見たら安心できるかと思えばその瞳も表情もただ欲に支配された獣だ。


─コワイ。


初めて怖いと思った。
雪男でいて雪男ではない。
強姦擬いの行為はどんどん進んでいく。バックルが外されてカチャカチャと室内に響く音がやけに耳障りだ。


「…雪男」


返事はない。
ただ俺の身体を求めてる。
雪男とするのは嬉しい事。
でも今は…。


「雪男、大好きだぞ」


頭を撫でて笑いかけてやった。
その言葉しか出なかった。
その言葉しか伝えられなかった。

意志に反してつうっと頬を涙が伝った。


「あ…」

「……」


動きが止まるとふわりと抱き締められた。


「…兄さん、ごめん」

「…うん」

「どうしようもなくて…このままでいて」


抱き締められたまま雪男の右手が動き出す。俺の顔の横にある雪男の口からは熱い吐息が吐き出される。


「…!」

「驚くよね…っは…ごめ…んっ…」


だんだんとスピードを増す手つきと同時に上がっていく息を耳元で聞いているだけでこっちの身体も熱くなっていく。


「おまえの声、もっと聞きたい」

「んぅ…?」


雪男が相当に追い詰められているのはよく分かった。あの雪男が俺の前で一人でするなんて考えられなかった。だから雪男の動き続ける右手に俺の右手も重ねてやった。


「あっ…ん…っ…」


感度の上がった唇からは惜し気もなく艶のある声が漏れる。羞恥心からかいつもあまり声を漏らさない雪男だからこそ今の痴態は俺の欲に火を点ける。


「もっと聞きたい」

「兄さ…んっ、あぁっ……はっ…」


扱くスピードはどんどん増していく。自身が一層大きくなって限界が近いのが分かった。


「にぃ…さ…、っは…もう…」

「…いけよ」


口元のほくろに唇を寄せて自身の先端を強く刺激してやればびくびくと震えながら白濁を吐き出した。


「大丈夫か?」


もたれかかる背中を撫でながら問い掛けると、赤く染まる頬を俺の肩に預けて眉間に皺を寄せた。


「まだ駄目みたい…身体が熱くて…」


まだ荒い呼吸をする雪男は辛そうに眉根を寄せる。
とにかく濡れた衣服を脱がすと肌が異常に熱い。肌に触れると異常な程にびくりと反応する。


「出せば楽になりそうか?」


赤い顔でこくんと頷くと不安そうに潤んだ瞳を俺に向ける。大丈夫だから任せろ、と告げると震える身体を自分の腕で押さえ付けて唇を噛んでこの状態に耐えているようだった。

精を放ったばかりの雪男自身は既に立ち上がっていた。
俺は雪男を早く楽にしてあげたい一心でそこに手を這わせる。ゆるりと撫でるとくぷっと透明な液体が溢れた。
それを手に塗り付け上下に動かすとより敏感になった身体は面白いように跳ね上がる。動かす手はそのままに先端をくわえて舌を這わすと雪男の口からは女のような高い声が漏れる。


「はっ…あぁっ、ん…あ…また……も…」


吸い上げるようにして舌で強く刺激すれば呆気なく口内にどろりと苦味が広がった。
ごくりと飲み込むと肩を上下させながら目を丸くした雪男が目に入った。


「そんな、事まで…」

「おまえだってするだろ」

「僕はいいんだよ…初めてじゃない?大丈夫?」

「おまえのならいいんだっ!大丈夫っておまえの方だろうが」

「ん…少しだけ楽になったけど…」


苦笑いをする顔はまだ赤くて息は荒く吐き出される。
やたらと妖艶な雪男にこっちの方が我慢がならないと半分起き上がっていた肩を掴んで押し倒した。




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