オリジナル小説 短編

□実際の2人の距離
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俺には、ちょっと気になっている人がいる。




毎朝、自分の乗る電車の一本前に乗っていく高校生だ。

坊主頭で、目がキリッとしていて。

坊主だから野球部なのかな…

どこの学校なのかな…

どういう声なんだろ…


いろいろ考えてしまう。

そう。

俺の好きな人は、

まったく知らない赤の他人。



だからチキンな俺は話しかけられないし。

だから、仲良くなることもない。







今日も何時もと同じ時間にホームへ行く。

だいたい毎日俺が先なんだ。


そして電車がホームへ入ってくる直前にその子は来る。

今日も来るかな…

そんな期待に胸を膨らませつつ待つ。


あっ

来た。



何時もの乗車目標の列に並ぶ。

列車が来るまでの間は後ろ姿しかわからない。


「まもなく2番ホームに通勤急行…」


あの子の乗る電車が来てしまう。


何時ものように列車はホームへ滑り込む。


ドアが開いてその子が乗る。

自分はその次の電車に乗らないといけないから、その子が並んでいた乗車目標に並ぶ。


「お待たせしました〜通勤急行発車します」

駅員の放送と、メロディーが鳴る。



今日もお別れ…

なんて1人で勝手に思ってしまう。


プシュー


ドアが閉まる。


ガッチャン


そして、

俺はホーム。

あの子は電車の車内。

まったく別の空間に。


その時、俺は思う。

どんなに俺が好きでいようが、想っていようが。




これが実際の2人の距離なんだ。









end








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