具合が悪い筈なのに、何故こんなに動けるのだろう。
化物の、驚異の回復力なのだろうか。若しくは、本能しか働かなくなっている所為なのだろうか。
その本能の趣く儘になっている静雄が、次の行動に出る。

臨也が最後の手段と思い、股間を蹴り上げようとした瞬間、静雄の手が下降して行った。
声が聞こえて我に返ってくれたのかと安堵したのも束の間、今度はベルトのバックルに手を掛けられ、臨也は本気で足をバタつかせた。

「ちょっと、ホントに良い加減にしてよっ…止めてってばっ」

無理矢理気味にズボンを下ろされ、抵抗している筈なのに下着も取り払われる。
露にされた下腹部にカッと頬を赤らめた臨也だったが、取り敢えず今はこの場から脱する事だと思い、静雄を蹴り上げるべく足に力を入れる。

「こ、のっ…退けってばっ」

この際、急所でなくとも、当たれば何処でも良い。
腹だろうが顔だろうが、少しの隙が出来るだけで良い。
そう思い、臨也は滅茶苦茶に足を動かす。
思い切り蹴っている為、ゴスッ、ガツッという鈍い音が響く。
しかし、確実にダメージを与えている筈なのに、静雄はびくとも動かない。
終いには足を開かされて間に躯を入れられ、閉じる事も出来なくなってしまった。

「ちょっと…こりゃマジでヤバいな…」

熱で朦朧としている静雄に、この儘先に進む何て事は出来ないだろう。
しかも、男相手に。
と思うが、臨也も冷や汗を浮かべる。
と言うのも、静雄が自分の指を舐めて濡らし始めたからだ。
それをどうするのかと追ってみると、案の定、後孔へと挿し込まれた。

「っ…何して…っ…このっ、バカッ」

相手が誰だか、静雄は恐らく解っていない。
何故スイッチが入ったのか解らないが、この儘行為へと縺れ込むだろう。
その証拠に、静雄は指を増やし始めている。

「シズちゃんっ…やだって…ねぇ、聞いてよ、ねぇっ、ッ…」

必死に訴えるが、臨也の制止は静雄には届かない。
それ所か挿し込まれた指が不規則に動き始め、臨也は思わず息を詰めた。

「もう、やめてよ、ねぇ、ホント、洒落にならないって…」

内部をグリグリと抉られ、段々と解れて行くのが自分でも解る。
この儘では、本当にヤバイ。
そうは思っても躯が言う事を聞かず、内部への刺激に反応するだけで逃げる事が出来なくなっていた。
いつの間にか手も自由になっていたが、こちらもシーツを掴む事しか出来なくなっている。
何とかしなければと頭では思っているのに、躯は耐える事の方を優先しており、動こうとしない。
どうしたら。
そう思っていた臨也に、絶望的な光景が映る。

「ちょっと…シズちゃん?」

指が引き抜かれホッとしたのも束の間、静雄は穿いていたジャージを下げ、中から何かを取り出す。
それが何なのか何て、確認しなくとも、解る。
案の定、それは大きく育っていた性器で、臨也は悪寒を走らせる。

「嘘だろ…こんな…」

此処まで来ても、どうにかなるんじゃないかと淡い期待を抱いていた臨也。
しかし、大きな硬いモノが後孔に押し当てられ、その期待はあっさりと打ち砕かれた。

「ゃ…やだ…やだ、シズちゃんっ…ッ、クッ、ィッ…アァッ」

その儘挿入された静雄の性器は、無遠慮に臨也の中に侵入を始める。
解したと言っても、所詮受け入れる箇所ではない場所である後孔には、許容量オーバー。
しかも静雄の性器は規格外で、臨也は想像以上の圧迫感と痛みに声を上げた。
そして目の前が白くなり、意識を飛ばしてしまった。

しかし、今の状況を把握していない静雄は、そんな事を気付く筈もない。
それ所か、意識を無くして躯の力が抜けたのを良い事に、一気に全てを臨也の体内に埋め込んだ。

「…っ、ッ…うあぁぁぁっ」

痛みによって、現実に引き戻された臨也。
それは先程迄の痛み以上で、全身が真っ二つに引き裂かれてしまったかの様。
これなら、意識を無くしていた方がマシ。
しかしそう上手くは行かず、中々飛んでくれない。
そうこうしている内に律動が開始され、臨也は壮絶な痛みに耐えかね、ボロボロと涙を流した。

「痛いっ…痛いよ…もぅ…止めて…」

無意味と解っていても、臨也は静雄に制止を訴える。
勿論静雄にその声は届かず、ただ本能的に腰を振るだけ。
その動きは正に暴力的で、相手を気遣う等、微塵も無い。

そして漂う血の臭い。
恐らく、無理に挿入した上に律動も重ねられた為、内部が切れて出血してしまったのだろう。
しかし、出血の痛みなのか内部を無理矢理抉じ開けられている痛みなのか、臨也には解らない。
そんな痛みに耐えている最中もガクガクと躯を揺さ振られ続け、静雄の顔が涙で歪む。

「シズちゃん…」

臨也は、初めて静雄を怖いと思った。
しかし、それはこの暴力的な行為に対してでは無く、静雄が自分を認識しない事に対してだった。
尚も続く律動だが、静雄の瞳は依然として虚ろな儘で、目の前にいる筈なのに臨也を映していない。
いつもは頼んでもいないのに、匂いを嗅ぎ付けて何処からとも無く飛んでくるのに。
こんなに近くにいて、しかもこんな事をしているのに、何で解らないんだろう。

「シズちゃんの…バカ」

臨也は手を伸ばし、静雄の両頬を挟む。
そして視線を合わせる様にこちらを向け、切なげに眉を寄せた。
それでも合わない視線に、臨也は、あぁ、と気付く。
怖いのではなく、悲しいのだ、と。

いや、悔しいのかもしれない。
いつも煩わしい位真っ直ぐにギラつく視線を送って来るのに、今はその瞳に何も映していない。
熱に魘されているとは言え、許せない。

「風邪何かに負けるなんて、情けないよ、シズちゃん」

もう抵抗を諦めた臨也は、その儘パタリと手を落とす。
勿論静雄はそんなのお構いなしに、欲望の剥き出しになった獣の様に、本能の儘に腰を振り続けた。

[TOPへ]
[カスタマイズ]




©フォレストページ