静臨

□後悔(連載中)
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新羅が出て行った後、起こされた静雄が「うーん」と唸りを上げながら躯を起こした。
腹の辺りに掛けられていた毛布を除け、頭を掻いて伸びをする。
そして寝ぼけ眼で臨也を見て…。

「臨也…手前…っ!!」
「わー、ちょっと待ってよ、この状態で殴り掛かるのはどうかと思うんだけどっ」

臨也と眼が合い、反射的に立ち上がった静雄。
いつもの様に勢い良く迫り、今にも殴り掛からんばかりに襟首をグッと掴む。

この状況での応戦は流石に厳しいと感じ、慌てて制した臨也。
しかし、掴まれた襟首は特に締められる事も無く添えられた儘で、まだ寝惚けてるのかと思いつつ不思議そうに首を傾げて見上げた。

「このやろ…んだよその顔…」
「え、いきなり何なの、失礼な」

静雄の言う意味が判らず、臨也は不愉快そうに眉を寄せる。
しかし、静雄は肩を震わせつつ俯くだけで、返事は無い。

「シズちゃん?」
「…手前何か…大っ嫌いなんだよ。なのに…」

俯いた儘、絞り出す様に言葉を発した静雄。
言葉から推測するに、この震えは怒りから来る物なのだろう。

と、此処で臨也は新羅の言った事を思い出し、あぁ、と納得をした。
確か、此処に運んでくれたのは、静雄。
恐らく、瀕死の重傷を負って倒れている所に遭遇してしまい、嫌いな相手だが仕方無く手を貸してしまったのだろう。
その事に対し、悔いているのだろう。

「何で助けてくれちゃったの?」
「…何でって…」
「だって、あの儘ほっといたら俺、確実に死んでただろうに。シズちゃんもそう望んでたんでしょ?」
「そりゃそうだけどよ、あんな事言われちゃあそうも行かねぇだろ」
「…あんな事?」

そう言われ、臨也は再び首を傾げた。
…あんな?
揺らいでいた意識の中で、何か言ったのだろうか。
それが原因で、静雄は見捨てる事が出来なくなってしまったのだろう。
恐らく…罵声か何か。

「あー、えーと…ゴメン」
「………」

此処は謝っておいた方が良い。
そう思い謝罪したのだが、当の静雄は素直に謝られ、拍子抜けした表情を見せた。
そして暫く固まった後、襟首を掴んだ手をワナワナと震わせ始めた。

「何…謝ってんだ」
「え、だって俺、何か言っちゃったんでしょう?」
「っ…手前、覚えてねーのか?」
「あー、んー…実は曖昧でさ。あ、運んでくれてありがとね、新羅から聞いたよ」
「………」

暢気にそう言ってヘラヘラと笑っている臨也を前に、静雄は震わせていた肩をガックリと落とした。
そして襟首を掴んでいた手を漸く解き、力無くダラリと落とした。

「ねぇ、俺、何言ったの?最期に見るのがシズちゃんだ何て最悪…とかじゃいつも言ってるか、うーん…ねぇ、何?」
「………いや…」

襟首を解放された臨也は、ホッとしたのか饒舌が戻って来た様子。
しかし、ベッドに横たわった儘、動く事が出来ないのは変わらない。

自分なら、痛みはある物の、弾丸をぶち込まれても何とも無いのに。
しかし、それは自分が特異体質だからだと、静雄も自覚している。
普通の人間とは違うのだと。

だからあの時、血の匂いに包まれて背筋が凍った。
その上、あんな事…。

「シズちゃん?」
「あー…んでもねーよ。じゃあな」
「シズちゃん?ちょっと待っ…」

臨也が呼び止める。
しかし静雄はその声を無視し、臨也に背中を向けて部屋を出て行った。




to be continued
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