村虎

□僕のヒーロー無配
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帰宅した村正は、縁側に座り自分の手を見下ろしている高校生の弟の姿を見掛け、不思議に思いつつ近寄って行った。
そして、何故自分の手をそんなに見詰めているのか把握し、大きな溜息を吐いた。

「まぁた喧嘩か?」
「だぁって、突っ掛かって来んだからしょーがねーだろ」
「そうは言ったってなぁ」

喧嘩っ早い訳でもないが、冷静に引く事も出来ない虎徹は、今日もあちこちに生傷を作って帰って来た様子。
それを見た兄、村正は溜息を吐きつつも心配そうに眉を寄せる。
今回は手首を捻ってしまった様で、右手に湿布を巻いている。

昔から怪我をしても直ぐに直ってしまう為、長引く事もない。
だが、今回は利き手だ。
日常生活にも少なからず支障が出てしまうだろう。

「お前、ただでさえ箸の使い方下手なのに」
「うっせーよ、母ちゃんには炒飯作って貰うから良いんだよ」

フン、とそっぽを向く弟を、全く、と呆れ顔で見下ろす村正。
まぁスプーンなら持てるだろうし、当面の間は仕方が無いと眉を下げる。

「能力、使えば良いじゃないか」
「俺は人助けの為にしか使わねーって決めてんだって」
「別に攻撃にじゃなくて、逃げる為に使えば良いだろ」
「逃げる何てしたかねーよ」

勿論、その言い分は村正にも判る。
逃げてばかりいては、何を言われるか判らない。
弱虫や負け犬等のレッテルでも貼られてしまっては、田舎では直ぐに広まってしまう。
そうなれば、虎徹は良い笑い者になってしまう。

男は勇ましい方が良い。
とは思うが、高校生になっても生傷が絶えないというのも、どうした物か。

「ま、程々にな。何かして欲しい事があったら言えよな」
「別にねぇよ」

そう言う弟に、村正はまた眉を寄せる。
多分これは嘘だ、と直感で判る。
弟の下手な嘘が見抜けない様な兄ではない。

虎徹は、自分がネクスト能力に目覚めてしまった事で、周囲に迷惑を掛けて来たと思い込んでいる。
確かに最初の頃は力の加減が出来なく、苦労もした。
だが一番苦しんでいるのは虎徹自身だと判っていたし、自分で何とかしようと努力していたのも知っている。
家族には甘えても良いのにと思うが、何処か遠慮している所があり、村正はそれを腹立たしく思う。

「嘘が下手なんだよ、お前は」
「っ、別に何もねーって」
「良いから、言ってみろ」
「………」

そう促しても黙りこくる弟に、段々と苛立ちを覚え始めた村正。
何も言わないという事は、何かあるという事。
さっさと言えば良いのに。
そう思いつつ、自分も縁側に座って虎徹の左手を掴んで少し捻り上げ、強引に先を促す。
こうでもしないと、コイツは素直に言わない。だが。

「いててててっ、痛ぇよ兄貴っ」
「なっ、そんな強く握ってねーだろーが…っ、お前まさか」

もしかしたら、右手だけでなく、左手も?

「右よりはマシなんだけど、さ」
「お前なぁ、そういう事はちゃんと言えよ」

片手でさえ不自由だろうと思っていたのに、両手となると、もう行動がかなり制限されて来る。
食事は勿論、何をするにも不自由だ。

「母ちゃんには言うなよ?」
「ったく、判ったよ」

幼い頃から、母親には散々心配を掛けて来た。
それを弟は気に病んでいるのだろう。そんな事、母親にしてみれば、一つも苦労とは思っていないだろうに。

「じゃ、そーゆー事で、宜しく頼むわ」
「あぁ、って、何処行くんだよ」
「あ?トイレ、便所、しょんべん」
「しょんべんまで言うな、トイレ、だけで良いだろーが」

立ち上がり、ヒヒッと笑いながらトイレに向かう虎徹。
全く、大人なんだか子供なんだか判らない。
そう思いつつ、村正も眉を下げる。
しかし。

「何だ、早かったな」

直ぐに戻って来た虎徹。
用を足して来たとは思えない早さだ。
未だ縁側に座り込んでいた兄の所へと戻って来た虎徹は、実に情けない顔をしていた。

「何だよ、どうした?」
「兄貴ぃ…俺、しょんべん出来ねぇ」
「……はぁあ?」

怪我をした両手を見せる虎徹を、疑問符だらけの顔で見上げる兄。
だが、瞬時に全てを理解した村正。
そして、この世の終わりかの様な表情を浮かべた。



「何だこりゃ、介護か?」
「だって何でも言えっつったのは兄貴だろ?」
「だけどよぉ」

今、鏑木家のトイレに一緒に入っている、この家の住人でもある兄弟二人。
事情を知らない者が見たら、間違いなく固まってしまう光景。
尤も見る者といえば、母親位しかいないのだが。

便座を上げ、その前に立つ虎徹。
そしてその後ろに、村正が立っている。
虎徹はチャックを下げて下半身を出しており、村正はソレを後ろから手を回して添えている状態。
前から手を添えても良いのだが、弟のを見たくないという心理が働き、こういう体勢なった。

「ホラ、早くしろよ」
「るっせーな、そんな急かすなって」

そんな会話をしている内に、ジョボジョボという水音が聞こえて来て、村正はあからさまに嫌そうな顔をした。
何でも言えとは言ったが、まさかこんな介護をする羽目になるとは。

「良いぜ兄貴、ふぃー、助かったわ」
「そうかよ、ったく」

清々しそうな声を上げ、息を吐く虎徹。
今迄色々と弟の世話をしてやって来た村正だったが、流石に今回ばかりは驚いた。
精神的にダメージを受けたというか、萎えた。
何で下の世話まで。そんな事もあり、少しからかってやろうという悪戯心が芽生えてしまった。

「っ、おい…兄貴?」

後は仕舞って貰って、チャックも上げて貰って、となる所なのに、何故か村正の手は違う動きをしている。
放尿を終えたモノを離さず、添えていた手で掴み、覆い始めた。

「うぉおお!何してんだよ兄貴!つか汚ねぇって!」
「んなもん、後で手ぇ洗えば良いだろ」
「いやいやいや、つかそーじゃねーし。何やってんだよ」

兄の手付きがいよいよ怪しくなり、焦りを覚えて身を強張らせた虎徹。
覆っていた手が上下に動き始め、完全に扱いている状態になった。

「なっ、兄貴、何す…っ、ちょっ、待っ…止めろって…ッ」

その手を振り解こうとして身を捩るが、躯を抱き抱えられて身動きが取れなくなる。
その間も手は休む事なく動き続け、次第に虎徹の躯に変化が現れ始めた。
先走りを溢れさせながら、どんどんと質量を増していく虎徹のソレ。
次いでヒクヒクと震え始める手の中の物に、村正はニイッと口角を上げる。

「何だよ、おもらしか?」
「兄貴っ、ふざけんのも良い加減に…っ、クッ…は、ァ…」

口では威勢の良い事を言っているが、虎徹の息はどんどん上がり、熱を帯びて来る。
その内途切れ途切れになり、小さな声も漏れ始めた。

両手を怪我している虎徹は手で払う事も出来ず、体勢からして不利な状況にある。
能力を使って逃げればと先程は言ったが、それをしてしまうとトイレを壊す事になってしまう。
そんな事もあり、虎徹は兄に良い様にされてしまっている。

そして、一方の村正にも、ある変化が起こり始めていた。

「つか、さ、何か当たってね?」
「あぁ、何だろうな」

虎徹の躯を後ろから抱き抱えつつ、扱き始めた村正。
その下半身も変化を見せ始めており、無意識に弟へと擦り付けていた。
萎えていた筈なのに、今では立派に育ってしまっていた。
そして、ベルトを外して自分も下半身を曝す。

「介護してやったんだ、ちょっと付き合え」
「は?ちょっ、おい待てって、止めろって…ッ…」

下着ごと、無理矢理ズボンを下ろされた虎徹。
その隙に逃げようと思ったが再び捕まってしまい、同じ体勢を取られる。

「挿れやしねーよ」
「ったりまえだろ!つか、おい…マジかよ…」

先程は確かに布越しに感じていた、兄の膨らみ。
それが今は、直に感じる。
しかも濡れており、その上固くなっている。

「足くっつけて、立ってろ」
「ちょっ、兄貴っ…嘘だろ…ッ、ふ、ぁ…ャ、ァッ…」

虎徹の尻の割れ目をなぞる様に当てられた村正の性器は、その儘前へと移動し、双球を割る様に押し上げながら太腿の間から性器に添う様に表へ顔を出した。
村正は二本合わせるとその儘扱き始め、内股を擦る様に腰も動かし始める。

「もっと腰上げろ」
「身長差あんだから、無理だって、つか、コレ…ヤバイ」

耳元に兄の情欲を孕んだ声を聞き、虎徹はゾクリと背筋が粟立つのを感じた。
その後やって来た熱は自分でも抑え切れなく、朦朧とする意識の中で、ただされるが儘になっていた。

「兄貴、ちょっと俺、マジでヤバイって」
「あぁ、俺ももうヤバイ」

兄弟での行為という背徳感も相俟ってか、互いに限界に近付くのが早い。
それでも相手より先に達してなるものかと、互いに我慢を見せている。
だがこの場合、虎徹の方が断然不利。

「ッ…ちょっと待てって、狡いぞ兄貴…ッ、ヤッ、先っぽばっか…ッ…ャ、ァ…アッ…」

思わず大きく喘いでしまい、慌てて口を噤む虎徹。
しかし愛撫は続き、その後も喘ぎは漏れてしまう。
根元から扱き上げられたり、先端を刺激されたり、翻弄され続ける。
何より密着している兄の肉棒が熱くて、魘されてしまう。
そんな弟の姿を見て、村正も確実に限界が近付いていた。

「や、ぁ、も…イッちゃ…」
「なら、イカしてやる」

虎徹の性器は既に弾けそうになっており、内股もヒクヒクと痙攣を始めている。
その股に挟まれた村正の性器も、弾けそうな位、膨張していた。
村正は二本の性器を扱きつつ、虎徹の先端に指をグイと食い込ませる。
すると虎徹はビクンと背を撓らせ、声を引き攣った様な声を上げた。

「ヤッ、ァッ…ヒッ、ッ…ァ…アァッ…」
「ッ…クッ…」

次いで村正も息を詰め、ビクンと躯を震わせる。
すると二本の性器から白濁がピュッピュッと放たれ、便器の中へと落ちて行った。



「馬鹿兄貴」
「手伝えっつったのはお前だろ」

その後トイレを後にした虎徹は、兄に悪態を放ちつつ、自分の部屋へと向かった。
しかし体力はある方の筈だが、流石に消耗したのか、その足取りは覚束無い。
そんな弟の姿を見て悪乗りし過ぎたかと思う村正だったが、あの時は自分でも止められなかった。

まさか弟に欲情したとは思いたくはない。
恐らく、ヤリたい盛りだから、だろう。
そう思いたい。
だが。

「またトイレ、手伝ってやるよ」

そう階段の下から声を掛ける。
すると。

「……手、治るまでの間だけだかんな」
「………」

てっきり、また怒鳴られる物だと思っていた。
なのに、そう返されてしまい、村正は返す言葉を失ってしまった。

「……おいおい…そりゃヤバイだろ」

そう零しながら、村正は弟の後姿をずっと眺めていた。



end.

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