海のような君へ

□泣いて
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「よ、鈴」

今日はヤマトが来てくれた。

バンドの練習からの帰りなのか、それともこれからバンドなのか、どっちかは分からないけど…

「ヤマト!!、今日はバンドの練習?」

「今日はもう終わったところだ」

「お疲れ、ヤマト」

「おう」

そう言ってヤマトはベットの近くの、パイプ椅子に座った。

「鈴はなに…って勉強か…」

ヤマトは嫌そうに、顔を歪めた。

「ヤマトは勉強嫌そうだもんね」

「好きな奴なんているわけ………
あー、光子朗とか丈とかは好きそうだな……」

「でも、そのおかげで助かってるんだけどね。
あ、この前、空が来て、勉強教えてもらったんだ」

「空から聞いた。
鈴って、結構頭いいよな。
中学の勉強って難しいのに、それをこの夏休みだけで勉強しようとするんだからな」

「光子朗君や丈さんの教え方が上手だからだよ。
ヤマトも教えてもらったら?」

そういうとヤマトは嫌そうな顔をした。

「それは遠慮する」

予想通りのヤマトの答えに、私は笑う。

「笑うなよ……」

ヤマトは苦虫をつぶしたような顔になる。

それからすぐに、ヤマトは病室を見渡す。

「にしても……殺風景だな」

「病室がカラフルだったら、なんか変だからでしょ?」

「それもそうだな。
寂しくないのか?」

「うーん……みんなが来てくれる時は楽しんだけど………
やっぱりみんな、帰ると………」

一応ベットの近くに置いてある机には、ぬいぐるみ(どれも、小さな…手乗りサイズ)とか置いてあるけど………

「やっぱり、大きいぬいぐるみとか、欲しいかも…………
寂しい時、抱きしめたいし……」

でも、そんな我がまま、お母さんとかには言えないけど………

「ふーん…人形な」

「ヤマト?」

ヤマトが二ヤリと笑った。

「なんでもねぇよ」

「???」

なんか、様子がおかしいヤマト……

それでも、ヤマトは時間が来るまで、話をしてくれた。

バンドのこととか、自分のこと、いろいろと話してくれた。





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