海のような君へ

□傍にいて
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3年前、医者は言っていた。

――もしかしたら、もう自由に動くことはできないかもしれない

と………

事実、あの時私の身体はほとんど動かなかった。

だから絶望して、全部が怖くなって……助けを呼んでいるミヨモンの所に、デジタルワールドに逃げた。

ミヨモンは助けることはできた。

でも………現実から逃げていることは変わりなかった。

こんな弱い私を、みんなは励ましてくれて、背中を押してくれた。

みんながいてくれたから、私は現実世界に戻ってくることができた。


それに動かないと思っていた体はちゃんと動いていた。

昔にみたいに……元気に動ける訳じゃないけど……日常生活に困るほどではなかった。

夏休み明けに…私は太一たちが通う、お台場中学に復帰する予定

そのため遅れている勉強(丈さんや光子郎君に教えてもらって)や、精密検査など、やっている。

夏休みだから、みんなよく会いに来てくれている。

だから、全然寂しくないよ。




「よっ」

「あ、太一」

今日は太一が来てくれた。

というか、比較的、太一はよく来てくれる。

部活……大丈夫なのかな………?

「勉強か?」

「うん、ただでさえみんなに遅れてるから、ちゃんとやらないと、授業とか遅れるし」

「鈴は真面目だな。
オレならぜってー、やらねぇ」

「太一が不真面目なだけだよ」

「オレは、ただ勉強が嫌いなだけだ!!」

「それ、威張って言うことじゃないよ……」

「それより……今日は天気もいいし、この辺り散歩でもしようぜ」

「そうだね……うん、じゃあ看護婦さんに言わないと」

「一緒に行った方が早いだろ?
一緒にいこーぜ」

そう言って太一は私に手を伸ばした。

「うん」

私はその手を、迷うことなく掴んだ。

太一の優しさが、手から伝わってくるようなきがする………






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