桜の舞う世界で

□拾訓
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血のような赤い髪

獣のような灰色の眼

人並み外れた回復力

強い日差しに弱い肌


人とは異なる特徴に、幼いころから違和感を感じていた。

それは、戦場に出てからさらに深まって行った………

もしかして、俺は_____




「春風に磨かれて 燃えさかる薄ら紅
衝動の影にやられた 墓地ダンサー♪」

この日縁側で、お茶を飲みながら歌を歌っていた。

もちろん、現在絶賛上映中の『劇場版 銀魂 新訳紅桜篇』の主題歌『バクチ・ダンサー』だ。

ちなみに映画の上映が終わっても、ここのセリフは変わらない。

「かわった歌だな」

原田が片手に湯呑を持ってやってきた。

「そうか?」

「ああ、隣いいか?」

「構わないぜ」

俺の承諾を得ると、原田は俺の隣に座った。

一言言ってから座るあたり、紳士的だと思う。

「お前の世界の歌か?」

「あー……まぁ、そうだな。
俺的には気に入ってんだ」

「他にはどんなものがあるんだ?」

「俺、歌下手だぜ?」

そう言うと、原田は俺の頭をなでた。

「そんなことないと思うぜ。
俺は好きだ」

そう言ってにっこり笑う原田。

こうやって女は落ちるんだな。

ま、俺は落ちることないけどな

「じゃあ、俺が気に入ってる奴…」

頭の中で音楽を鳴らす。

「僕らが勘違いしたアイデンティティーは〜」

俺が歌い終わるまで原田は目をつぶったまま聞いていた。

「良い声だな」

「そりゃあどうも」

「女の格好すれば、さらによくなるぜ」

「大きなお世話だ」

なんでここの連中は、俺に女の格好をさせたいんだ?

「なんで男の格好してんだ?」

「そこには深い訳が…………
あるわけねぇだろ」

「ねぇのかよ」

呆れながらも原田は笑っている。

「それに前に言ったと思うが、女の格好だと舐められることが多いんだ。
こっちの方が動きやすいしな」

原田は、それでも女の格好の方がいいと思うがな、と言っていた。

「それに、この髪もきれいだと思うがな」

そう言って、原田は俺の……血に染まった赤い髪を撫でようとした。

けど、その前に俺は原田の手を払う。





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