桜の舞う世界で

□九訓
1ページ/2ページ


「なぁ、怪我はいいのか?」

「いや、まだ治っていない(嘘だけど)」

今、藤堂と一緒に江戸の町を歩いている。

なんでも俺に江戸の町を案内させたいらしい。

今更だな。

「ここの甘味屋すげぇ、うめぇんだ!!」

「マジでか、なら今度行ってみねぇとな」

「だったら一緒にいこーぜ!!」

「もちろん藤堂の奢りだろ?」

「お、おう!!」

俺の言葉に藤堂は一瞬、言葉が詰まったが肯定した。

藤堂の奢りなら、思いっきり食えるな。

「なぁ、この前総司と戦ったんだろ?」

「そうだな」

「その時総司が負けたって聞いたけど……ホントなのか?」

「藤堂、俺は戦場で生きてたんだ。
このぐらいで負けてたら、戦場では生き残れるか」

「………やっぱ、戦場とかって怖いのか?」

ふと横を見ると、藤堂は顔を伏せていた。

「怖いと思ったことはねぇ、仲間がいたからな」

「人を切ったのか?」

「なに言ってん?んなこと当たり前だ。
切らなければ切られる。
それに………人を斬ることには慣れている」

そう、今よりもっと幼いころから…

俺の手は血で穢れている。

藤堂は何も言わず、地面を見ていた。

「俺が怖いか?」

「え?」

「人を簡単に殺せる俺は怖いか?」

俺の言葉に藤堂は首を横に振る。

「渚を怖いって思ったことねぇ…
ただ」

「ただ、なんだ?」

「もう少し女らしくした方がいいと思う」

「………うっせぇ、余計な御世話だ」

「だってさ、この前、着物来た時すげぇ可愛かったのに、もったいねぇと思ってさ」

こいつは気づいているのだろうか?

「なるほど、平助は俺の着物姿に見惚れていた、と」

「なっ……!!!///
ち、ちげぇ!!!」

「クックック、顔が赤いぞ」

「つーかさ、何で渚は照れたりしねぇんだ!?」

「社交辞令は聞き慣れているからな」

「………社交辞令じゃねぇって」

「なにか言ったか?」

「なんも言ってねぇ!!」

やっぱり、この藤堂はからかっても面白い。

「ニャー」

鳴き声が聞こえ、見ると俺の足元に猫がいた。





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ