桜の舞う世界で

□八訓
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「何故無理をさせた?」

「やだな、無理させたつもりはないんだけどね」

「だが、現に倒れている」

「分かってるよ。
まさか……倒れるなんて思わなかったから……」

「それに志柳は怪我をしている。
無理をさせて、悪化させるつもりか?」

「渚ちゃんが目を覚ましたら、ちゃんと謝るよ。
それに………もう、無理なんてさせるつもりないしね」

「珍しいな……総司がそんなこと言うなんて」

「ちょっとね、僕だって悪いと思ってるよ」


「…………ん?」

部屋の外がうるさい………

目を開けると、いつもの部屋の天井が見えた。

額になにか置いてあるようで、それを確かめるように額に手を当てる。

「……濡れた…手ぬぐい………?」

俺……どうしたんだっけ?

あ、そうだ……確か沖田と剣術をして……

あまりの暑さに倒れたんだ。

日差しに弱いって……不便だな……

なんて思いながら、部屋の外を見る。

さっきまで斎藤と沖田がいたはずなのに、斎藤の陰にしかない。

どうやら沖田はいなくなったようだ。

「さいとう………?」

「起きたのか?」

「うん……」

「はいるぞ」

斎藤の言葉に俺は返事をした。

「具合はどうだ?」

「おん、もう平気だ」

俺は体を起こす。

その時額にあった手ぬぐいが落ちる。

それを拾い上げ、近くにあった水に入った桶の中に入れる。

「すまなかった、総司が無理をさせたようで」

「いや、乗ったのは俺だ。
それに……久しぶりの剣術で楽しかった。
あまり沖田を責めるのは止めてほしい」

「……分かった。だが志柳もあまり無理はするな。
怪我がこれ以上悪化してはいけない」

斎藤の言葉に俺は一応頷く。

そもそも怪我は治っているからな。

それに斎藤は頑固なところがある。

ここは俺が折れた方が早い。

「怪我の具合はどうだ?」

斎藤に俺は首を横に振った。

「前に、平助に言ったように、ほとんど治っている。
後少しだ」

「そうか」

そういって、斎藤は小さく笑った。

…………こいつでも笑うんだな






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