桜の舞う世界で
□四訓
1ページ/2ページ
試衛館道場で保護を受けることになった俺、志柳渚。
彼らには感謝している。
俺の知っている場所とは全く違う世界。
彼らの知らない世界に生きていた俺を保護し、衣食住を提供してくれるからな。
「左腕の怪我は………完全にふさがったようだな」
保護が決まって翌朝。
俺の怪我は後もなくなっていた。
「今回は少し遅かったな………まぁ、しばらくは隠しているか」
ある程度の怪我ならすぐに治る俺の体質。
普通の人ならこの体質を気味悪がったりする。
せっかくここで生活できるから、こんなことで居づらくなるのは勘弁だ。
「おーい、##NAME2##」
部屋に藤堂が入ってきた。
………せめて一言ぐらい言えっての
「何の用だ?」
「薬持ってきたから飲めって」
「薬……?」
そう言って藤堂が見せたのは石田散薬≠ニ書かれた袋
「それって、効果あんのか?」
俺の言葉に藤堂は目をそらした。
「…………まぁ、人それぞれだな」
「それって意味ねぇだろ」
つーか、それってほとんど紛い物じゃねぇか。
「にしても大丈夫なのか?怪我の具合は?」
「まぁな、ほとんど治りつつあるが、まだ完全じゃねぇ。
押さえたら、痛みもあるしな」
「お前って……女のくせに口が悪いよな」
「うっせぇ、こういう口調にでもしねぇと舐められるんだよ」
俺はそう言う世界で生きている。
「でもさ、お前って女の口調似合いそうだな」
「…………」
藤堂がそう言った。
それも恥ずかしげもなく。
さらに笑顔で。
「お前さ、そんなこと言って恥ずかしくないわけ?」
「へっ…………?あ…………」
俺の言葉に自分が何を言ったのか思い出したようだ。
その証拠に顔が赤くなった。
「い、いや別に俺は!!!///
そんなつもりで言った訳じゃなくて!!」
「わーってるよ。
にしてもお前って面白いよな」
いや、面白いというより純情って奴だと思う。
「お、面白いって……」
「事実だろ?
ま、面白い奴は嫌いじゃないけどな」
そう言って笑う。
いや、自然に笑みが浮かんだんだ。
今まで緊迫した空気の中にいたから、こんなに穏やかな空気が久しぶりすぎて……
.