小説U
□夏の音。
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しゃく、しゃく、しゃく−。
先程から心地好い音が響いている。
その音の正体は犬夜叉が食べている西瓜。
うだるような暑さが、犬夜叉が西瓜を食べている音を聞くだけで少し和らいだような気がするなんて、なんとも不思議だ。
「おいしい?犬夜叉?」
「おー。かごめは食わねぇのか?」
「んー、今はいいかな。あんたが食べてるとこ見てるだけで、なんか涼しいし。」
「なんだそれ?おれが食ってて、おまえは食ってねぇのにそんなことあるか?」
「あるのよ。風情を解さないあんたには分からないかもしれないけど。でもその西瓜、真っ赤で本当においしそう。そうだ、一口ちょうだい。貸して?」
「駄目だ。」
「いいじゃない、一口くらい。本当にケチなんだから。」
犬夜叉から一口もらうことを諦め、もういいわよ−とあたしが言いかけた瞬間、あたしはぐっと腕を引っ張られた。
そして気づけばあたしは犬夜叉の腕の中にいて、犬夜叉から口移しでなにか甘いものが渡されたが、あまりにとっさのことだったので、それが西瓜だと分かるのに少し時間がかかった。
「どうだ、うまいだろ?」
「甘い…想像以上に甘いわね。」
「おれが食わせてやってるんだから、当たり前だろ。」
「ん。ね、犬夜叉もう一口ちょうだい?」
また、うだるような暑さが違う熱さになってあたしを襲ってきた。
どうやらこの熱は当分ひかないらしい。
→あとがき。