風がふくたび、鐘のようなおとを奏でてゆれる木々のあいだに、ぱっと開けた場所があった。
ぼくは、そのど真ん中のきりかぶにすわって、まるくなっていた。
ひだまりが、地面とぼくの背中をあたためている。
――ああ、太陽さん。ありがとう。
こんな気持ちのとき、思うんだ。もし太陽がなかったら、ぼくはほんとうに生きていけなかっただろうと。こんなこというと、当たり前だーって怒られちゃうね。でもね、太陽はこころにも見方してくれるから――ぼくがいいたいのは、そういうことなんだ。
ふいに涙があふれだした。
大好きな女の子がいたんだ。強くて、かっこよくて、だけど笑顔がすごく可愛い女の子。
ふしぎの森の、お姫さまだったんだ。
だからさ、この、ひなたの森に引っ越してくるとき、言っちゃったんだ。
――きみのこと、大好きだよ。
そしたらあの子は少し困ったような顔してた。しばらくして、そりゃあ、私だって好きよ。友達じゃない。あたりまえでしょう、って……。
ぼくね、ほんとうは知ってたんだ。あの子が好きなやつのこと。それでも、とびっきり優しく伝えたら、ぼくを好きになってくれるはず。そう信じていたのに。
――ごめんなさい。ごめんなさい。
苦しくって、憎いんだ。きみが好きなあいつも、もしかしたらきみのことも。
こんなみにくい気持ち、知りたくなかった。恋なんて、するんじゃなかった。
それでも太陽は、そんなぼくごと照らすんだから、ほんと嫌になっちゃうよ。
シャラン、ラン、ラン…
そのうち夜の帳がおち、しんとした森のなかでぼくはひとりぽっちだった。
ふと空を見上げると、黒くとがった葉影にかこまれて、淡い月のひかりが差しこんでいた。
ぼくは、いつかのきみの言葉を思い出す。
ねえ知ってた?月ってね、太陽のひかりが反射して光るのよ。夜でもさみしくないように、月をとおして照らしてくれるのよ。まったく、おせっかいな野郎ね。
――うん、まったくだね。
ぼくは月にむかって、むせび泣いた。ずっとずっと、朝がくるまでずっと、泣いていようと思った。
「かあちゃん、オオカミの鳴きごえがする」
「珍しいことじゃないわ。はやく寝てしまいなさい」