短編集

□たいよう
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風がふくたび、鐘のようなおとを奏でてゆれる木々のあいだに、ぱっと開けた場所があった。
ぼくは、そのど真ん中のきりかぶにすわって、まるくなっていた。

ひだまりが、地面とぼくの背中をあたためている。

――ああ、太陽さん。ありがとう。

こんな気持ちのとき、思うんだ。もし太陽がなかったら、ぼくはほんとうに生きていけなかっただろうと。こんなこというと、当たり前だーって怒られちゃうね。でもね、太陽はこころにも見方してくれるから――ぼくがいいたいのは、そういうことなんだ。

ふいに涙があふれだした。

大好きな女の子がいたんだ。強くて、かっこよくて、だけど笑顔がすごく可愛い女の子。
ふしぎの森の、お姫さまだったんだ。

だからさ、この、ひなたの森に引っ越してくるとき、言っちゃったんだ。

――きみのこと、大好きだよ。

そしたらあの子は少し困ったような顔してた。しばらくして、そりゃあ、私だって好きよ。友達じゃない。あたりまえでしょう、って……。

ぼくね、ほんとうは知ってたんだ。あの子が好きなやつのこと。それでも、とびっきり優しく伝えたら、ぼくを好きになってくれるはず。そう信じていたのに。

――ごめんなさい。ごめんなさい。

苦しくって、憎いんだ。きみが好きなあいつも、もしかしたらきみのことも。

こんなみにくい気持ち、知りたくなかった。恋なんて、するんじゃなかった。

それでも太陽は、そんなぼくごと照らすんだから、ほんと嫌になっちゃうよ。


シャラン、ラン、ラン…


そのうち夜の帳がおち、しんとした森のなかでぼくはひとりぽっちだった。

ふと空を見上げると、黒くとがった葉影にかこまれて、淡い月のひかりが差しこんでいた。

ぼくは、いつかのきみの言葉を思い出す。

ねえ知ってた?月ってね、太陽のひかりが反射して光るのよ。夜でもさみしくないように、月をとおして照らしてくれるのよ。まったく、おせっかいな野郎ね。

――うん、まったくだね。

ぼくは月にむかって、むせび泣いた。ずっとずっと、朝がくるまでずっと、泣いていようと思った。
















「かあちゃん、オオカミの鳴きごえがする」

「珍しいことじゃないわ。はやく寝てしまいなさい」












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