神桃学園
□弐
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「いったい、どういうことですの!?」
女子生徒の甲高い声が、神桃学園第肆区の広場に響く。それに重なるように、あちこちでも批難の声があがった。
「抜け穴が塞がってる!」
「ここから出して!」
「お父さまに云いつけてやるんだから!」
そんな物々しい様子を高見から見物する、二人の男子生徒がいた。
「毎年のことながら、愉快な光景やねえ」
一人がゆったりした調子で云う。
「悪趣味なやつだ」
もう一人がうんざりしたように視線をよこした。
「俺は煩くてかなわない」
「ははっ、怖い顔。そんなやから君はモテへんのや」
「ふん。俺はお前みたくちやほやされても、嬉しくもなんともないがな。それよりも、生涯でたった一人の女と」
「ハイハイ。わかりましたー」
「人の話しは最後まで聞け」
「あぁ、ところでさ」
「おい」
「今年も新入生が一人、消えたらしいで?」
その言葉に彼は、はたと口をつぐんだ。苦々しげな顔で首をふる。
「……あまり、口に出すな」
やがて石壁の向こうに大きな夕日が落ちてゆき、二人は紫がかった薄暗闇に包まれた。