むかし、むかしのはなしです。
あるところに、おおきくて、それはそれはうつくしい、桃の木がありました。
その木になる実は、万能の薬となり、おおくの人々をたすけてきたそうです。
神のやどる木。
人々はそうよび、たいせつにしてきました。
しかし、ながい年月のあと。木の根本にとつぜん、おおきな洞があらわれました。それはまるで、地獄の入り口が、ぽっかりとひらいたような、ふかいふかい闇でした。
洞からはわるい氣が流れだし、あたりの里をおおってしまいました。田畑はかれ、人々は病で死にたえました。
しかし、ほんとうに恐ろしいことがおこったのは、ここからだったのです。
『むかしばなし-桃と鬼-』