神と悪魔の『神生力』

□第四章
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「は?」


 開いた口が塞がらないくらい、夜接夜は唖然とした。


「分かりませんか? 私が命に代えても守りたいもの……それは師宮遊磨です」

「師宮先輩……?」

「そう。私は遊磨を守るためならどんなことだってします。方舟で陸条陽葉さんを止めたのは遊磨を守るため。あなた達をここまで連れて来たのは遊磨を確実に保護するため。全ては遊磨のためなんです」

「意味分かんねーよ! さっきその遊磨を攻撃したのは誰だよ!?」

「気絶してもらわなければ、もっと遊磨は傷付くことになる……遊磨を保護するにはこうするしかなかったんです」

「大体、遊磨を守るためになんで陸条陽葉側につく?」

「分からないのですか? 政府は遊磨を研究対象としか見ていない。いつ、何かの実験に巻き込まれるか分かったものではない……私みたいに」


 重々しく添えられた言葉。
 清水沢はそれ以上語らなかったが、それがどんな地獄だったのか。夜接夜には想像も出来ない。想像も出来ないからこそ、その意味を理解出来た。


「私は陸条さんのように元々強かったわけではない……そんな私がただの努力だけでここまでこれたと思いますか?」

 ちなみに、と清水沢は付け加える。


「私に今までに行われた手術数はざっと千を超えています」

「っ!?」

「いえ、私なんて五体満足で生きている時点でまだ幸せな方です。中には凄まじい者もありますよ? 神生力が体内で暴走して体が内部から破壊される苦痛を味わいながら死んでいった者、脳に機械を取り付けられて精神がおかしくなった者、生きたままカプセルの中に標本にされている者もいましたね」


 なんだそれは。
 夜接夜は率直にそう思った。

 自分が今までいた世界、平々凡々に暮らしていた世界とはあまりにもかけ離れていて、何を言っているのか理解が追い付かない。
 いや、頭が理解するのを拒んでいるのだ。そんな地獄がこの国にあってたまるか、と。


「分かりますか? 遊馬もいずれは同じような目に遭うかもしれない。今までは私が守っていましたが、代わってきましたが、それもどこまでいけるか分からない。この状況をどうにかするには、日本政府に反抗するしか、なかったのですよ」

「そんな……」

「ねぇ、神寿さん。あなたはCOIの虐殺に手を貸したことについて私を責めましたよね? ならば、あなたは出来ますか? 遊磨や大切な仲間を守りながら数千、数万の人間を同時に日本政府から守ることが、あなたには出来ますか?」
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