神と悪魔の『神生力』
□第三章
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「ですが敵もそれくらいは承知の上だったでしょう。何らかのプロフェッショナルが今もロックを解こうと奮闘しているはずです。二週間……つまりはタイムリミットです」
「……行くのか?」
夜接夜の問いに清水沢は頷いた。
「明日の日暮れとともに作戦開始。邪魔する敵を排除しながら目標を取り返します」
「……もちろんそこには陸条陽葉がいるんだよな」
「まずいると見て間違いないでしょう。一番要[かなめ]となる場所に一番強い守りを配置しておく。戦略として常識です」
囮も使えない。陸条陽葉もそこから動かないだろう。彼はただ『神愛[ゴッドラブ]』が奪われなければいいのだから。
それに陸条陽葉をおびき寄せ、時間を稼ぐ囮なんてそうそういない。
「そこであなたの準備が整ったのか聞きにきたのですが…」
「バッチリ……とは言えねぇけど、やるべきことはした」
夜接夜は左の拳を右の掌に打ち付ける。バシン、と小気味の良い音がした。
「それに私も行くわ。私が夜接夜をサポートする。それなら安心でしょ?」
「本当に……行くのですか?」
清水沢がほんの少しだけ眉尻を下げて悲しそうな表情を作る。
「分かっているとは思いますが、あそこは戦場です。生きて帰ってこれる保障はないのですよ」
「そんなの、夜接夜だって一緒。夜接夜が行くのなら私は付いて行きます。待っているだけなんて、嫌だから」
遊磨ははっきりと意志表示をした。取り付く島もない様子に、明らかに清水沢は残念といった顔をして、
「分かりました。私も行きましょう」
キッ、と表情を引き締め直した。
「清水沢さんも……来てくれるんですか?」
「私だって待っているのは嫌です。可愛い後輩が死んでしまうかもしれないというのに、力になれなのは嫌なんです。あなたが神寿さんを守るというのなら、私があなたを守りましょう」
それとも、私の力では不満ですか?
と清水沢が尋ねると遊磨はブンブンと高速で首を振った。
「ならば問題ないでしょう。私がSランクにいる所以というモノを、篤[とく]とご覧に入れましょう」
清水沢の眼鏡が怪しく光って、唇が若干吊り上げられる。この時夜接夜と遊磨には、細い清水沢の体が大きく見えたのだった。