神と悪魔の『神生力』

□第三章
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 そんな二人の光景を目の当たりで見て、意味が分からずに首を傾げながら夜接夜は、どこか打ち解けたような雰囲気が流れているように思った。

「二人ってさ、知り合い?」

「? 遊磨。話していないのですか?」

「はい。機会がなかったので」

「では遅ばせながら。私は清水沢静巳。遊磨の先輩にして、教師です」

「へー…先輩で……教師?」

 どういうことなんだろうか、と夜接夜は疑問に思う。


「先輩といっても小学生の時ですし、私が大学に入りながらの実践教育として中学生である遊磨に教えただけですがね。その時から遊磨とは一定の交遊関係を持っているのですよ」

「清水沢さんは頭も良いし神生力も強いし、教え方も上手かった。だから私も清水沢さんに色々と教えてもらっていたのよ」
「ほー」

 以外な繋がりに夜接夜はただただ感嘆するだけだった。


「しっかし、性格は正反対だよなー、二人って。冷静と激情。流石の清水沢さんも性格までは矯正は出来なかったの―――」

 メキィッ

 最後まで言い切れずに夜接夜の頬に拳が減り込む。


「性格が悪いって言いたいの?」

「間違えましたぁ! 遊磨さんは私が知り得る限りの最高の人格者です!」


 遊磨の拳に炎が纏われた瞬間にズバンッ、とビックリするほどの速度で土下座モードへシフトチェンジする夜接夜。

 それを見て清水沢は、

(まだこんな関係……ですか。遊磨の恋が実るにはまだまだ時間がかかりそうですね)

 溜息するのだった。


「そういや清水沢さん、何か用があるんじゃないのか?」

「ああ、すみません。話を脱線させてしまいましたね」


 頭を軽く下げる清水沢に夜接夜は苦笑する。
 最初以外はどちらかと言えば夜接夜が話を脱線させてきたのだから。

 
「方舟が占領されてから、二週間が経ちました」

「……何か動きが?」


 目に見えるくらいに清水沢の雰囲気が変わったのを察知して、夜接夜も真剣な表情に切り替える。


「いえ。依然として敵勢力は方舟の港と中央庁に結集したまま動いてません。まだ件の物体は取り出せていないようです」


 件の物体。『神愛[ゴッドラブ]』の資料とそれ自体である。
 政府はそれを方舟中央庁の警備が厳重なところに仕舞ってある。そこのセキュリティは簡単に解けるものではないらしい。

「とは言え、陸条さんの力は電気。電子機器等を使用したセキュリティは彼の前では玩具同然です。反って錠などのアナログなセキュリティが時間を稼いでいるようです」

「やっぱり新しい物でも古い物には勝てない所はあるんだよな」


 夜接夜の言葉に清水沢は頷く。どんなに進化したところで、人間は古い物から離れられることはない。メリットとデメリットは何物にも存在し、それを超越した完全な物などないのだ。
 姿形は変わっても、それらはいつまでも人間を支え、時には脅かし続ける。
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