神様売りの少女
□終(1)
1ページ/1ページ
「――さて、あなたから頂いた料金で話せるのはここまでよ」
少女は椅子から立ち上がると、ぐっ、と伸びをした。
「ふぅ、長話になったわね。私も久々に語って疲れちゃったわ」
影は残念そうに溜息する。
「あら? もっと聞きたかった? あなた、本当に変わり者なのね。それとも悪趣味と言った方がいいかしら?」
影は否定も肯定もしなかった。
少女は優雅に笑みを浮かべると、人形を持って路地の更に闇へと歩き出す。
影はそれについていこうとして、
「今日はもうおしまいよ」
少女に止められた。
「そうね、またいらっしゃいな。お金をもらえれば、私はまた物語を語ってあげる。幸せでも、不幸せでも、好きな方を」
そして、と少女を続けた。
「もし神様が欲しくなったら、いつでも言いなさい。幸となるか、不幸となるか、それはあなた次第だけど」
お休みなさい、と。
嘲笑にも見える笑みを浮かべて少女は、今度こそ振り返らず歩いていった。
月の光に照らされた金髪が闇に溶け込み、やがて消えた。
影は少しその場で立ち尽くし、そして少女とは反対方向へと歩き出す。
そして辺りは静寂に包まれた。