神様売りの少女

□終(1)
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「――さて、あなたから頂いた料金で話せるのはここまでよ」


 少女は椅子から立ち上がると、ぐっ、と伸びをした。


「ふぅ、長話になったわね。私も久々に語って疲れちゃったわ」


 影は残念そうに溜息する。


「あら? もっと聞きたかった? あなた、本当に変わり者なのね。それとも悪趣味と言った方がいいかしら?」


 影は否定も肯定もしなかった。
 少女は優雅に笑みを浮かべると、人形を持って路地の更に闇へと歩き出す。

 影はそれについていこうとして、


「今日はもうおしまいよ」


 少女に止められた。


「そうね、またいらっしゃいな。お金をもらえれば、私はまた物語を語ってあげる。幸せでも、不幸せでも、好きな方を」


 そして、と少女を続けた。


「もし神様が欲しくなったら、いつでも言いなさい。幸となるか、不幸となるか、それはあなた次第だけど」


 お休みなさい、と。
 嘲笑にも見える笑みを浮かべて少女は、今度こそ振り返らず歩いていった。
 月の光に照らされた金髪が闇に溶け込み、やがて消えた。

 影は少しその場で立ち尽くし、そして少女とは反対方向へと歩き出す。


 そして辺りは静寂に包まれた。

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