神と悪魔の『神生力』
□終章
1ページ/13ページ
「えー、これから皆さんと一緒に勉学を共にする仲間がなんと二人も来てくれました。では二人とも、挨拶をしてください」
壇上でこのクラスの担任である先生がそう言って教卓の前から退く。
そこに一人の女生徒が立った。腰まである黒髪。勝ち気そうな顔立ち。
「方舟第七高等学校から来ました。師宮遊馬、COIです。専攻は発火能力[パイロキネシス]。火を出せます。皆さんよろしく」
遊馬にしたら恙無く自己紹介を終えたつもりだったが、周りの人はポカンとしていた。
それはそうだ。何故なら彼らは『一般人』なのだから。
あの事件から一周間。一通り収束を見せたが、事件の爪痕は深く残った。
特に方舟はもう全壊と言っていい程にシステムも建物も土地も何もかもが駄目になっていた。
そこでもう一度方舟を創り直す計画が練られ、今旧方舟跡地で急ピッチで作業中である。
それまでの間、COIはどうすればいいのか。
何もさせないわけにはいかない。
考え付いた案は意外と単純だった。
『普通の生活を送らせる』
元々は普通の人間だった彼らは、神生力以外に特別な力などない。それは今までの観察やSランクによる外部研修によって殆ど確認出来ていた。
後は監視の問題と世間の目だったが、前者は苦労すれば方舟程のセキュリティは確保出来ないが何とかなる。しかし後者への言い訳が今までなかった。
だが今回は違う。
COIは住処を失い、居場所に困っている。それを助ける形ならば面目もたつのだ。
記者会見でそれを発表した総理に『では一般人の中に危険因子を放り込むのですか?』と聞いてきた記者がいた。
しかし総理はこう言った。
『ではあなたは日本国民である彼ら数十万人に野垂れ死ねと?』
こうして、COIはまた新たな居場所を見つけた。
しかしここはまだ仮の住まい。今も新たな方舟が建造中であり、また押し込められる暮らしが待っている。
だが構わない。自分達はこうして生きているのだから。
「遊馬さんはこちらに来たばかりなので分からないことも多いと思います。皆さん、協力してあげてください。――じゃあ次に、君も自己紹介を済ましましょう」
「へーい」
遊馬は隣に目をやる。
「同じく方舟第七高等学校から来ました―――」