神と悪魔の『神生力』
□第二章
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「……………………………うおぉう」
跳ね起きたと表現出来る程夜接夜は勢いよく上半身を起き上がらせた。
視界には真っ白しかない壁。シンプルな構造をしたドアタイプの出入口。清涼感を漂わせる観葉植物。染み一つないカーテンと、それを揺らす心地好い風。そしてそれを誘い込むように少しだけ開け放たれた窓。
「………はあぁ。夢オチだったか」
顔を両手で覆ってそこに自分がいるのを確かめてから夜接夜は安堵の息と溜息の両方に取れる吐息を吐いた。
「どうしたのよ?」
「いや、陸条とかいう若白髪野郎のビリビリに焼き殺される夢を見てって遊磨ぁ!? いつからそこに!?」
「アンタが目を覚ます前からずっといたわよ」
今度は隣に座っていた遊磨に驚いて上体を仰け反らす。
「待て待て待て待て! ここはどこだ!? なんで遊磨が隣に!?」
「……とりあえず落ち着いて気を失う前のこと思い出したら?」
「そうだな。えっと俺の名前は伊丹千里であってるよな?」
全く落ち着いてない夜接夜に遊磨はスッ、と右手を振り上げて、
「ぼへっ!」
振り下ろした。
「いってーな、この暴力女!」
「アンタが落ち着かないから強行手段に出たまでよ。どうしたら自分の名前まで忘れてるってのよ!? アルツハイマー?」
「だからって殴ることはないだろ!」
「大丈夫。これ以上馬鹿にはならないわ」
「ちょっと待て! それは流石の夜接夜さんも傷付きましたよ!?」
ギャー、ギャー、と言い争う夜接夜と遊磨。すると、部屋の扉が勢いよく開いて数人が夜接夜の元へと駆け込んできた。
「夜接夜、頭は無事!?」
「夜接夜さん!? 頭は大丈夫ですか!」
「夜接夜。頭に異常はない?」
心配そうに言葉を掛ける千里とカンナとわっちゃん。しかし混乱して激昂している夜接夜にはその言葉は、
「あぁ? お前らそんなに俺の頭が悪いのが心配かよ!」
罵倒にしか聞こえなかった。