神と悪魔の『神生力』U−@
□第一章
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雨、雨、雨。
「だっるー……」
夜接夜は机に広げた教科書には目もくれず、頬杖をついて空を見ていた。
六月十日。天気予報では梅雨に入ったことをお天気お姉さんが完璧な営業スマイルで教えてくれた。その笑みだけは向日葵のように晴れていたが、残念ながら予想は的中。空はモクモクと分厚い雲で覆われ、鉛色の粒が過酷な労働条件で知られる日本が誇るサラリーマンもビックリする程無休で降り続けている。
「――えー、つまり直線AMは直線BCの中線でありますから、外心Oと垂心Hを結んだ直線と直線AMの交点G'は三角形ABCの重心Gと一致します。よって先に求めた式により、直線OGと直線GHの対比は1:2という公式になるわけです」
先生が前で数学の解説をしているが、夜接夜にはそれが何を言っているのかさっぱりである。
何かの公式の説明のはずなのだが、式を簡略化するための公式がすでに難しくて憶えられない。先生の書いていることをそのままノートに丸写しすることすらもう嫌になっていた。
「憂鬱だぁ……」
呟いた言葉は儚く消えて、
空は暗く、夜接夜の心も暗く、
しかし世界は平和なまま回っていた。