SLAM DUNK

□とりあえずお相子です。
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11月半ば、もう冬も間近だというのに気温は20度を超す暖かい日が続いていた。
こんな暖かい日で部活もない久しぶりの休日。
藤真はデートでもしようかと唯を誘ってはみたが、課題が終わらないということで中止に。
しかし一緒には居たいと唯が言ったので、藤真の部屋でまったりすることになったのだが…なぜだか約2名が追加された。

「あれ、何もない。普通ここでしょ、隠すなら。ねぇ藤真さん。」

坂下恵。
藤真のベッドの下を覗いて一言。
どうやら所謂エロ本を探している様子だ。
その発言に藤真が、俺は中学生かよ…とげんなりした声で言ったがじゃあどこ?と恵が聞く。

「無いよ。」
「嘘、そんなはずないじゃない。」
「無いって。別に必要ないし。」

必要ないし、という言葉に恵は、藤真が用意した簡易用の折りたたみテーブルで黙々と課題を進める唯を見た。

「ああ。」
「え、何、めぐ。」

一通り会話は聞いていたけれど、唯は敢えて知らぬ存ぜぬを貫いた。
話を広げようとしない唯に藤真は胸をなで下ろした。
それを見て恵はつまんなーいとぼやき、横で静かにバスケットボールの週刊誌を読み漁る流川の膝に寝転んだ。

「あ、それいいなぁ。私もしてほしい。」

唯はペンを止め、恵を見て言った。

「え、膝枕?」
「うん。」
「「え。」」

何でか、恵と藤真がハモる。

唯は、え、なんで?と言った表情をして恵と藤真を交互に見た。

「だって唯どうしたの?人前でそんなこと言うなんて。珍しい。酒でも飲んだ?」
「飲んでない。だって人前って言ってもめぐと流川しかいないじゃん。」

流川はぴくっと少しだけ反応し、唯をちらりと見たが、すぐに雑誌に視線を戻した。
互いに馴れ合うことの嫌いな性質の為、初めは本当に距離が縮まず、ほんの少しだが恵も気を使っていた。
そんな流川に気付いたらしい恵は、流川を下から覗き、にっこりと微笑んだ。
まるで良かったね、と言わんばかりの笑顔で。
流川は少し照れたのか、読んでいた雑誌を恵の顔にべしっと乗せた。

「ちょっと何すんのよー。」
「別に。ちょっと手が滑った。」

二人のやり取りを見ていた唯は微笑ましく思い、にこにこ笑って、また課題の続きをやり始めた。
しかし藤真だけは心中穏やかではなかった。
膝枕で寝たいというのは男の心情だと思っていた。
そして腕枕をされたいというのが女の心情で。
クラスの女子もそんなようなことを言っていたし。
恋愛にマニュアルは無いとは言うけれど、自分の彼女がそんなことを言い出すは思いもしなかった。

それから1時間が経っただろうか…
課題に集中していた唯だったが、ようやく終わり、テーブルに突っ伏した。
横目で流川と恵を見れば、いつの間にか二人ともすやすやと眠っている。

「おつかれ。何か飲む?」
「うー…」

唯は突っ伏したまま、右の手を藤真に向けて差し出した。
反射的に左手でその手を受け止めて、「何?」と聞くと、唯は右の手に力を込めて起き上がった。

「足りない。」
「?」
「藤真が足りない。」
「へ?」

正直、驚いた。
珍しく甘えている。
藤真はちょっぴり感動を覚え、空いている右手で口元を覆った。

「藤真?」
「あ、いや何でもない…」

ああ、そうか寝ているからか。

「じゃあ、唯、こっち向いて。」
「うん。」

唯の顎に手をかけて軽くキスをした。
二人が寝ているとはいえ、なんだかいけないことをしているような気がして、唯は急に落ち着かなくなり、恥ずかしくなった。
なんだろう…好きすぎて足りないとか言ってみたはいいものの…人前だとやはり羞恥心が。。

「唯も課題終わったし、二人起こして何か食いに行くか。」

腕時計を見ると針は12時半を過ぎていた。

「そ、そうだね。お腹空いたしね。」

唯は立ち上がると、ハッとした。
寝ているはずの流川と目が合ったのだ。

……いつから起きていたのか。
そんな動揺が流川にも伝わったのか、「何にも見てないっす…」とぼそっと言った。

「見たんじゃん!!」

唯が真っ赤になって叫ぶと、その声で恵が覚醒した。

「えー…何々…?どうしたのー…」

言うなよ?言うなよ?と目でアピールをすると、

「言わない。」

と流川は言った。

口に出すなー!と更に慌てると案の定、恵はなになにー?と流川に聞いてしまった。
ああああ悪循環。
いつものポーカーフェイスはどうした?と藤真は慌てる唯を見ておかしくなった。
男も女もギャップに弱いとよく言うが、俺もそのクチだな、と…。
唯はよく墓穴を掘る。
特に恵の前では。
学校ではあんなにクールに過ごしているのに。
藤真としてはそんな唯を見ているのが面白くてたまらなかった。

「ねーねーなんなのー?」

流川はうーん…と目を閉じて少し考えた。
よし。とばかりに目を開き、何をするのかと思えば、恵の身体を起こして…

「っん…!」

…キスをした。

うっそ…。
一瞬くらっとし、足に力が抜けてよろけると、藤真はさっと唯を支えた。

「やるね、流川も。」

そう言うと藤真は、再び顔を真っ赤にしている唯の顔を覗き込み、にこっと笑った。


「何、なんで今キス?」

きょとん顔の恵に、真顔のまま「いや、別に。」と流川は答えた。

流川なりの優しさなのだろうか。

(これでおあいこ的な…?えー…)

そして特に何もリアクションの無い恵を見て、さすがだと思った。


「で、唯、課題は終わったの?」
「あ、うん。終わった。だから今からご飯でも食べに行こうよ…と思って…起こそうと思って…うん…」
「は?何?」
「いやいやいや…さ、早く食べに行こ!ね?」


こうして4人で近くの定食屋へと向かったのでした。
もうすぐ冬の選抜。
まだまだ青春は終わらないのです。





end




→おまけ。



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