Short story
□気持ち
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『白石さんが来てから、レギュラー以外の部員もすごく上達したんだぁ』
白石の教え方は大変上手く、さすが四天宝寺の部長といえた。
雪「………」
コートの隅にあるベンチに腰掛けながら、練習風景をぼんやり眺めている2人。
嬉しそうに話すりんの隣では、何やら考え込んでいる雪。
雪「…りん、」
『ん?』
雪「何で…」
『?』
体を震わせる雪に目を向けると、ばちっと目が合う。
雪「何でもっと早く教えてくれなかったのぉ!?」
『な、何を?』
目を丸くして首を傾げるりんに対し、雪はびしっとテニスコートを指差した。
雪「し、ら、い、し、さ、ん!
あんなにイケメンでかっこいいなんて思ってなかったわよ?」
『イ、イケメン?』
肩をガクガクと揺さ振られ、雪の気迫に押されて何も言えない。
雪「りんは白石さんのこと、どう思ってるの?」
『どうって?』
雪「好き?」
急に真剣な表現で尋ねてくる雪と、コートで部員にフォームを教えている白石を交互に見て、りんは口を開いた。
『す、好き…だよ///』
雪「!!」
あんなにブラコンな子が!と感動したのはこの時だけで、
『先輩達皆、大好きだよ!』
雪「………」
ニコニコと微笑むりんを見て、雪は呆れて溜め息も吐けなかった。
雪「(恋愛とか、考えたこともないんだろうな…)」
しみじみと思っていると、りんと雪の間に勢い良くテニスボールが飛んできた。
白「ごめん!怪我ないか?」
慌てて白石が走ってくる。
『はい。大丈夫です』
りんがそう答えると、「良かった」と白石は安心したように肩を落とした。
『今日はすごく暑いので、たまには休憩もしてくださいね』
白「そやなぁ。りんちゃんのスポーツドリンク、早よ飲みたいし」
『え?』
白「うちのドリンクと比べると、めっちゃ美味いねん」
優しく笑う白石に、りんは微かに頬を赤く染めて『ありがとうございます…』と呟いた。
雪「………」
りんの変化に、雪はいち早く気付く。
雪「(…そうだ、)」
2人を見ながら、雪は心の中である考えを浮かばせていた。