Short story
□気持ち
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雪「ち、ちょっと待って」
日も少しづつ落ちてきた時、とあるオープンカフェでガタンと大きな音が響いた。
雪「あ、すみません…」
勢い良く椅子から立ち上がった雪に周囲からは冷たい視線。
小さくなって再び席に着き、目の前でアイスミルクティーを飲むりんを見据えた。
雪「(落ち着け私)えーと、始めから整理してみると…夢にいつも出てきた人と再会、家で手料理も食べて、現在は青学でコーチ中?」
『?う、うん』
雪「(私が家で毎日アイス食べてゴロゴロしてた間に何があったの!??)」
何のケーキを食べようかとメニューを楽しそうに眺めるりんを見ていたら、驚いている自分が馬鹿馬鹿しくなってきた。
雪「…行くわ」
『え?』
雪「明日、部活あるんでしょ?見たいの!その白石さんとか言う人」
『ええ!?』
目を丸くして驚くりんを余所に、雪はキラキラと輝いている。
雪「だって、親友の運命の人だよ?見ておきたいじゃん」
『う、運命?』
雪「幼い頃の約束、夢で見た人との再会…運命以外のなにものでもないわ!」
雪の気迫に唖然としつつ、その言葉の意味を考えてみた。
『(運命……)』
カァァと赤くなる顔を隠すように、りんは再びメニューに視線を戻す。
『(そ、そんなんじゃないもん…っ)』
1人慌てている間にも雪は着々と話を進め、マネージャーの手伝い…否、見学に来ることになったのだった。
雪「うわ、ここが青学かぁ」
想像より綺麗で広い。
興味深そうにキョロキョロと首を動かしている雪を横目で見て、りんはクスリと笑う。
『雪ちゃん。今日は、』
雪「わかってる!マネージャーの手伝いに来たに決まってるでしょ?
りんがいつもどんな風に活動してるのか、前から気になってたのよ」
『なら良か「で、ノートの方もバッチリよ」……』
ノート、とは、雪が今まであった中でかっこいいと思った人の絵やデータが書いてあるもののことである。
雪は美術部のため、絵は人一倍上手なのだ。
Vサインをする雪は本日1番生き生きとしていて、本命はそっちなのかな…とりんは不安になった。
『おはようございます』
大「おはよう」
部室に入ると副部長であり鍵当番である大石が既に来ていて、いつものように挨拶を交わした。
雪「はじめまして、九条雪と言います。今日はよろしくお願いします!」
大「話は聞いてるよ。仕事を手伝ってくれるなんて、うちとしては大歓迎だよ」
爽やかな笑顔を向ける大石だったが、
雪「(この人が大石先輩?変な髪型だな…)」
雪は率直な感想を心の中で延べていた。
『じゃあ私、先にコート整備して来ますね』
大「ああ。ありがとう」
りんにつられ雪もその後を追い、テニスコートへ向かった。
雪「りんがいつもやってるの?」
『うん。でも、昨日のうちに大体は片付けるんだけど、今日の練習で使いやすいかなって』
笑顔で話すりんを見つめ、さすがと感心する雪。
雪「(マネージャーって、タオルやドリンクを渡すだけだと思ってた…)」
イメージと違うかも、と思っていたら、
「おっはよ〜!!」