Short story
□微熱
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熱があるせいか、顔が熱い。
心なしか胸が高鳴るが、それも熱のせいだ。
暫くしてドアをノックする音がして、返事をすれば遠慮がちに開いた。
そこにはメイドと…久しぶりに見る、りんの姿があった。
『こ、こんにちは!』
「…ああ」
メイドが「ごゆっくり」と微笑んでその場を離れると、りんはあからさまにあたふたと戸惑った。
「こっちに来い」
そう声をかければゆっくり近付いて来た。
近くにある椅子に座らせ、視線を合わせる。
『起きてて大丈夫なんですか?あの、ご迷惑でしたら帰りますので…』
フルーツの入った籠を差し出されたので、受け取る。
「平気だ。気にすんな」
『…でも、すごく顔赤いですよ?』
急に立ち上がったと思えば、りんの顔が近くまで来て自身の手を俺の額に添えた。
驚く俺より、りんは更に目を見開き驚く。
『熱い…熱はどの位ですか?』
8度だと答えれば、そんなにと言いた気な顔を向けた。
『何か食べましたか?』
「いや、食欲ねぇんだよ」
『…ダメです!何か食べないと』
スクッと立ち上がるりん。
何だと不思議に思い見つめると、『キッチンお借りしますね』と真剣な顔で言う。
「あ?何言って『跡部さんは眠っていて下さい!』
妙な気迫に押され何も言わないでいると、りんはそそくさと部屋を出ていってしまった。
(………)
扉が閉まると、しんと静まり返った部屋。
その方向を見つめ暫くぼーっとしていたが、何をするつもりなのかと考えれば小さな笑みがこぼれた。